研究課題/領域番号 |
20K17922
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
宇野 豪洋 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (10805154)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脳動脈瘤 / 脳動脈瘤内コイル塞栓術 / 再発 / CFD / pressure difference |
研究実績の概要 |
脳動脈瘤の破裂を防ぐには開頭クリッピング術や脳血管内コイル塞栓術による治療が主流である。血管内治療であるコイリングは、低侵襲であるが、再発率が高いことが問題である。また、コイリングの理想のコイル面デザインに関して十分な科学的根拠に乏しいのが現状である。過去に流体力学解析によって仮想コイル面における圧力上昇と再発との関係が報告され注目を浴びたが、この結果は術前に予測可能であり大変有用であった。しかし、この検討はコイル塞栓後の状態を仮定し、人為的に動脈瘤を切除したvirtual postcoilingモデルの仮想コイル面で検討しており実際のコイル面との乖離がある。本研究では仮想コイル面を術後コイル面により近い面で設定し、仮想コイル面での圧力測定の有用性を検証する。また同一症例においてコイル面を変化させ、再発の少ない理想のコイル面を模索する事を目的とした。術前に作成可能なvirtual postcoilingモデルの検証がすすめば治療方針変更に繋がり有用であり、再発の少ない理想のコイル面に対して、新たな判断基準を確立することでコイリングの治療成績向上を図ることができる。 仮想コイル面での圧力測定の有用性を検証:実際のコイル塞栓後のデータから作成したpostcoilingモデルで測定したコイル面における圧力上昇と再発との関係を検討したところ圧力上昇が再発と有意に関係しており、再発予測に有用と考えられた。 他の部位動脈瘤での検討:以前の報告は内頚動脈瘤のみでの検討であったが、前交通動脈瘤でも同様に再発の予測が出来る可能性が示唆された。 再発の少ないコイル面の模索:分岐血管を有する動脈瘤では分岐血管を残したコイル面にかかる圧力より分岐血管ごと塞栓したモデルのコイル面にかかる力が低い傾向にあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コイル面にかかる圧力を、仮想コイル面を変化させ様々なモデルで検討したが、実臨床での経験での印象と異なる結果となった(実際は再発しやすいと考えられる、動脈瘤ネックを余らせたモデルでのコイル面にかかる圧力が低いなど)。その原因を十分検討するために時間を要している。 また実臨床で経過観察中に動脈瘤壁にブレブを生じた症例を2例経験し、ブレブ発生のための動脈瘤壁にかかる流体力学的因子に興味を持った。そちらの検討にも時間を要した。また臨床においてCOVID19の対応に労力が割かれ、研究に費やす時間が減少し予定の遅れが生じてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
コイル面を変化させたモデルでの検討結果が実臨床での印象と乖離している点を十分検討する必要がある。学会発表を通して同研究分野の有識者の意見を求めたいと思う。また、これまでにまとまったデータを論文化する事にも注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍であり、学会参加が十分できなかった。オンラインでの学会参加が多く、十分に意見交換ができなかった。また、旅費が少なく科研費使用額が想定以上に少なくなった。未使用額は統計解析ソフト、解析機器の補充、論文投稿費に充てる事を計画している
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