研究課題/領域番号 |
20K17925
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
埴原 光人 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (60596998)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | グリオーマ / 質量分析器 / バイオマーカー / 手術支援 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は新たな境界指標として、迅速かつ簡便に腫瘍の細胞密度を測定できる手術支援装置の開発であり、装置として質量分析器を用いる。 本研究では期間内に、1)培養細胞での腫瘍細胞密度測定、2)マウスモデルを用いた診断精度の検証、3)ヒト凍結検体を用いた診断精度の検証、を実現する予定で研究を開始した。 令和2年度は1)培養細胞実験:グリオーマ細胞株を安定し継代し、マススペクトル診断の精度検証および2)マウスモデルの作成と試料作成をおこなった。マウスモデルはマウス グリオーマ細胞株GL261を右大脳に定位移植した頭蓋内移植モデルを作成し、正常コントロール(PBS移植)と移植群各n=8で作成した。マウス大脳を凍結保存すると並行して、マウス尾より血液採取 (移植前、移植後3,7,14,21日) -80℃で保存した。 令和3年度は3)ヒト凍結検体を用いた診断精度の検証:ヒト検体については凍結標本から、18の試料を作成した。細胞密度に関しては、細胞株のような均質な検体の場合は、有効だが、ヒト組織のような腫瘍だけでなく血管などが入り込むと複雑化し、正確性に欠けることが分かったため、質量分析器の特性を活かしたグリオーマのバイオマーカー探索も並行して行うこととした。令和4年度はマウスモデルの尿検体と血液検体のマススペクトルデータ解析を行い、移植後早期から有意に変化するマススペクトルを発見した。各マススペクトルに対してHuman Metabolome Databaseで代謝産物候補を絞り、病的意義を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の細胞密度検証に加え、質量分析器の特性を活かし、より臨床応用に重要なバイオマーカー探索研究を行っている。交差検証による非がん/がんの判別精度(90%以上)を目標とした、診断アルゴリズムの構築には最低でも数十患者から得られたマススペクトルを収集する必要があるためヒト検体については正常コントロールの検体不足があり、統計学的に有効な比較検証が十分行えていない。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト検体正常コントロールのサンプルの確保を進めると同時に、マウスモデルで有意差が得られたマススペクトルについて、頭蓋内モデルだけでなく、皮下モデルも作成し検証を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒト検体の解析を行わなかったため残預金が生じた。 次年度は新たにマウス皮下モデルを用いた実験を行う計画である。
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