研究課題/領域番号 |
20K17932
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
森垣 龍馬 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 特任准教授 (70710565)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ジストニア / 小脳 / 線条体 / ストリオソーム / ウィルスベクター / オプトジェネティクス |
研究実績の概要 |
初年度は前行性アデノ随伴ウィルスベクター(AAV-DJ-CMV-hfGFP)投与2週間後にマウスを還流固定し、免疫組織学的に線条体の特に背外側運動領域のストリオソーム分画に強い発現がある部分の特定を行った。候補皮質はAllen brain atlasのvirus injection studyを詳細に検討した結果、島皮質、帯状回などの数か所に決定した。マウス脳皮質に35ゲージシリンジを用いて定位脳手術装置で片側脳皮質に局所的に投与し、神経トレーシング研究を行ったところ、ストリオソーム分画に優位に発現がある皮質の検討がついた。しかしながら、マウス脳は小さいため、投与量を減らしても完全に限定するのは難しく、ラットを用いた実験を併用した。ラット脳ではウィルスベクター投与後、2週間での観察では十分ではないため、さらに2週間の観察期間をおいて、実験を継続している。試験的にこの皮質を電気刺激を行ったところ、ジスキネジア発症が認められた。 また、ウアバインを持続注入ポンプで小脳に投与し、ジストニアモデルマウスを作成する方法を確立した。ジストニアモデルマウスはウアバイン量によって症状の発現量がかなり変化するため投与量と症状発現程度の決定を行った。今年度はオプシン搭載前行性ウィルスベクターAAV-DJ-CaMKⅡa-eNpHR3.0-EYFPまたはコントロールベクターであるAAV-DJ-CaMKⅡa-EYFPを定位脳手術で投与し、神経終末側である背外側脳線条体にオプトジェネティクス照射用の光刺激電極を留置し、片側ジストニアなど不随意運動を惹起できるかどうかを調べていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウィルス感染症が社会的に広がっており、計画通りに実験を遂行することが難しかった。また、元々考えていたマウスを用いた実験で上手くいかない部分(神経トレーシング)を補うため、ラットを併用したことで時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、線条体ストリオソームに入力する皮質領域を決定する。次にストリオソームの機能を抑制することでジストニアを惹起できるかどうかを調べる。ターゲットに決定された片側脳皮質にオプシン搭載前行性ウィルスベクターAAV-DJ-CaMKⅡa-eNpHR3.0-EYFPまたはコントロールベクターであるAAV-DJ-CaMKⅡa-EYFPを定位脳手術で投与し、神経終末側である背外側脳線条体にオプトジェネティクス照射用の光刺激電極を留置する。2週間後にまず590nmの光刺激にて背外側線条体のストリオソームを抑制して、片側ジストニア症状が惹起されるかどうかを見る。片側で症状が惹起されない場合は両側で試す。 最後にストリオソーム機能を興奮させることでジストニアを治療できるかどうかを調べる。ターゲットに決定された皮質にオプシン搭載前行性ウィルスベクターAAV-DJ-CaMKⅡa-hChR2(E123T/T159C)-EYFPまたはコントロールベクターであるAAV-DJ-CaMKⅡa-EYFPを定位脳手術で同様に投与し、小脳にNa+ポンプ阻害剤であるウアバインを持続注入ポンプにて持続投与することで、ジストニアを発症させる。発症したジストニアを470nm光刺激にてストリオソームを興奮し、ジストニア症状を片側で改善させることができるかを観察する。もし症状の改善が得られない場合は両側皮質にウィルスベクターを投与し、両側刺激を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症蔓延下において、実験が計画通り進まない時期も多く、次年度使用額が生じた。今年度は可能な限り、粛々と研究を進める予定である。実験動物購入代金、神経トレーシング、オプシン搭載前行性ウィルスベクター、刺激用プローベ、免疫組織学試薬購入代金に使用する予定である。
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