研究課題
高齢化に伴い頸動脈狭窄症患者は増加している。特に、プラーク内の新生血管が破綻し出血を伴う症例は、不安定で脳梗塞の発症が多い。我々は新生血管の内皮細胞を覆うペリサイトの減少がプラーク内出血に関与する可能性について報告した。また、新生血管周囲にはマクロファージが高発現しており、新生血管ペリサイトの減少およびプラーク内出血にはマクロファージが関わっていることも推測された。そこでマクロファージ活性の調節能や炎症抑制作用を有するサイトカインであるIL-27に着目した。IL-27は動脈硬化巣への脂質取り込みを軽減することが報告されているが、プラーク内新生血管および出血へ与える影響は明らかになっていない。血管新生の過程において、まずVEGFによって血管内皮細胞の遊走、増殖を生じ管腔形成が起こる。次いで血管内皮細胞から、PDGF-Bが分泌され、ペリサイトが血管周囲に遊走し、新生血管は成熟化する。培養細胞による検討にて、VEGFはペリサイトの機能を抑制することが明らかとなっている。また、動脈硬化巣においてマクロファージはVEGFを産生することが知られている。つまり、頸動脈プラーク内でもマクロファージがVEGFを分泌しペリサイトの機能を抑制している可能性が考えられる。IL-27は炎症抑制作用を有しており、マクロファージによるVEGF産生を抑制する。IL-27はマクロファージによるVEGF産生を抑制することでペリサイト機能の低下を防ぎ、頸動脈プラーク内出血を抑制する可能性があると考えられる。そこで、頸動脈狭窄症においてIL-27がペリサイトおよびプラーク内出血に与える影響について検討することにした。現在、IL-27ノックアウトマウスを用いた検討、臨床例における検討を行っている。
3: やや遅れている
IL-27ノックアウトマウスの生存率が低いため。
引き続き研究計画に則って研究を推進させる。
次年度も引き続き試薬の購入を予定している。
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World Neurosurg.
巻: 146 ページ: e708-e713
10.1016/j.wneu.2020.10.173.