研究実績の概要 |
今年度の末までに、累計162症例を対象としたジストニア関連16遺伝子の次世代シーケンス解析をおこなった。変異検出頻度は39%(63/162)であった。また、遺伝子別の変異検出頻度の順位は昨年度と変化しておらず、上位2遺伝子は順にTOR1A (19例, 11.7%)、KMT2B (15例, 9.3%)、SGCE (11例, 6.8%)であり、全検出変異の過半数を占めていた。 TOR1Aで検出された変異は全てホットスポット変異であった。KMT2Bで検出された変異の半数近くはナンセンス変異またはフレームシフト変異であり、それらいずれもKMT2Bタンパク質のC末端に位置する酵素活性部位の消失をもたらすものであった。なお、残り半数はVUS (臨床的意義が不明な変異)であった。一方、SGCEで検出された全ての変異がタンパク質量の低下に寄与していることを、HiBiTといった簡易的なタンパク質の発現・局在解析手法を用いて明らかにしており、執筆していた論文に今年度追加した症例を加え、現在英文校正の段階まで進めてある。 MLPA (Multiplex Ligation-dependent Probe Amplification)解析は昨年異常が検出された2家系を除き、今のところ新たな異常は検出されていない。 今年度は最近ジストニアとの関連が示唆されているか6つの遺伝子(ARSG, DRD1, DRD5, STON2, KLC1, SNAPIN )のプライマーを新たに設計し、上記の16遺伝子やMLPA解析で優位な変異が検出されなかった症例を対象に解析を進めた。現時点で50例近くの解析を終えているが、数例においてVUSが検出されており、今後どのように解析を進めるかを検討中である。
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