研究実績の概要 |
ジストニア症例におけるDYT遺伝子群の変異頻度及び傾向の集団解析というテーマで解析してきた。前年度から引き続き遺伝性ジストニア疑い症例を対象に、ジストニア関連16遺伝子の次世代シーケンスを行い、累計170例を超えるまでに至った。変異検出頻度上位3遺伝子は不変のTOR1A, KMT2B, SGCEの3つで、有意と思われるバリアントが検出された65症例の72%を占めた。 SGCEについては、バリアントの検出傾向に特徴があり、症例を追加して、各々のバリアントについての影響の考察を行った。例えばスプライシング異常のものについては、細胞モデルでスプライシングの解析を行い、臨床的意義が不明なバリアントVUSについては、細胞モデルで発現解析や局在解析を行った。その結果、SGCEで検出されたいずれのバリアントも、SGCEがコーディングしているイプシロン-サルコグリカンの発現や局在にダメージングであることが示唆された。これら結果をまとめた論文は、2022年の10月にClinical Genetics誌にアクセプトされた。 上記のSGCEで構築した解析系は他の遺伝子のバリアントの機能解析にも適用することができるため、年度末まで解析を進めたが、そちらは今後の研究に繋げていきたいと考えている。また、初年度より進めてきた、次世代シーケンスで異常が検出されなかった症例を対象にしたエクゾンレベルの異常を検出するMLPA (Multiplex Ligation-dependent Probe Amplification) 解析については、1家系でGCH1の片アレル欠失を検出したのみであるが、こちらも今後の研究で引き続き実施していく予定である。
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