研究課題/領域番号 |
20K17945
|
研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
金光 拓也 大阪医科大学, 医学部, 助教 (20851025)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ホウ素中性子捕捉療法 / MID / HSA / 悪性神経膠腫 / BNCT |
研究実績の概要 |
本研究の目的は腫瘍選択的粒子線治療であるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に使用できる新規ホウ素化合物を開発し、その有効性を示すことである。東京工業大学との共同研究によりホウ素含有率の高いホウ素クラスター結合マレイミド(MID)にがん集積性タンパク質であるヒト血清アルブミン(HSA)を組み合わせたMID-HSAを開発した。 F98グリオーマ移植担脳腫瘍モデルラットに対し、従来から用いているBPAとMID-HSAを用いて組織内ホウ素濃度の測定を行った結果、MID-HSAの静脈投与群ではBPAと比較し、腫瘍内ホウ素濃度は低値であったが、正常脳と比較したTumor/Normal brain ratioは17.6とBPA群より高値であった。また脳実質、腫瘍内へ直接注入するConvection enhanced delivery(CED)を用いて投与した群ではBPAと比較し、腫瘍内ホウ素濃度は有意に高値であった。またMID-HSAの特性により静脈投与群において投与後3時間群および24時間群においても腫瘍内ホウ素濃度が同程度であり、腫瘍内に長時間残存することが証明できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に記載したとおり、新規ホウ素化合物MID-HSAの開発および脳腫瘍モデルラットを用いて腫瘍内へのホウ素の集積および他臓器への集積濃度を確認することはできたため、中性子照射を行うことで従来と比較し生存期間の延長が期待できるが、コロナウイルスの影響で予定していた中性子照射の動物実験を行うことができなかった。 令和3年度に改めて行い、生存期間の評価を行う予定としている。また流量可変式ポンプを用いた至適投与条件の検討に関しては作成した薬剤の量に余剰分がなかったため行うことができなかった。動物照射実験を優先して行い、余剰分でCEDでの投与条件の再検討も行う予定としている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度に最優先して行う内容としては前述した脳腫瘍モデルラットに対する中性子照射実験を行い、MID-HSAの有用性を検討することである。令和3年度も9月、12月前後に2度照射実験を予定している。本研究はMID-HSAを用いた中性子照射の治療効果の有用性を示すことが最終目標である。現在投与条件の検討に加え、MID-HSAの修飾基を変更した新規薬剤の開発も平行して行っており、こちらも令和3年度内に実験をすすめる方針としている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた動物照射実験がコロナウイルスの影響で施行できなかったため、次年度使用額が生じた。次年度に動物照射実験を行うため、それらの費用などに使用する予定である。また同様の理由で学会参加がウェブ上になったため旅費がかからなかった点も次年度使用額が生じた理由である。
|