研究課題/領域番号 |
20K17949
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
佐野町 友美 山形大学, 医学部, 客員研究員 (20812465)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 悪性髄膜腫 / hENT1 / dCK / ゲムシタビン |
研究実績の概要 |
悪性髄膜腫は有効な治療法が確立しておらずそのため予後が不良であり新規治療法の確立が望まれている。以前我々は、マウスモデルを用いて抗悪性腫瘍薬ゲムシタビンにより高悪性度髄膜腫の長期制御が可能であったことを世界に先駆けて報告したが(Takeda et al. Oncotarget 2017)、その機序は不明であった。本研究ではゲムシタビン感受性に関わる分子であるdCKおよびhENT1に注目し高悪性度髄膜腫のゲムシタビン高感受性の機序の解明に挑んだ。様々な悪性度の複数の髄膜腫細胞株を用いた実験でdCKとhENT1の発現と髄膜腫細胞の悪性度(WHO grade)およびゲムシタビンに対する感受性が正に相関したため、dCKとhENT1が高悪性度髄膜腫細胞におけるゲムシタビン感受性に寄与している可能性が示唆された。またsiRNAによりdCK,hENT1をノックダウンすると高悪性度髄膜腫細胞のゲムシタビンへの感受性が減弱したためそれら分子の高悪性度髄膜腫細胞のゲムシタビン感受性への寄与が明らかになった。また、hENT1のノックダウンにより高悪性度髄膜腫細胞株でdCKのタンパク質とmRNAの発現が再現性よく低下したがその逆は認めなかった。これはhENT1が転写レベルでdCK発現を調節することを示唆する。更にgradeⅠ-Ⅲの髄膜腫病理標本を使って、悪性度とdCK及びhENT1の発現状況を検討したところ高悪性度髄膜腫はdCKとhENT1の発現が高かった。結論としてhENT1の発現は高悪性度の髄膜腫細胞の増殖と生存、およびdCKの発現に必要であった。更にhENT1およびdCKの高発現は髄膜腫患者におけるより強い腫瘍細胞増殖活性およびより短い生存と相関していた。これらの結果からhENT1とdCKは髄膜腫患者の予後予測因子として実用可能であり、また抗悪性腫瘍薬への反応性の予測因子として機能しうる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画通りの実験を実施し所期の成果を得たことに加えて、予定外の重要な新知見まで得ることができたから。
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今後の研究の推進方策 |
予想外の新知見に関する検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定の研究期間中に本研究の意義をより一層高める可能性のある新知見を示唆するデータが得 られたため、そういった新知見を検証するための実験を計画し、次年度使用とした。
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