研究課題/領域番号 |
20K17952
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
廣野 誠一郎 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (30554258)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 安静時functional MRI / 注意障害 / 遂行機能障害 / 覚醒下手術 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続いて安静時functional MRI(rs-fMRI)の画像処理について、第9回ABiS脳画像解析チュートリアルの内容に沿って習熟度を高めつつ、さまざまな高次脳機能検査データの蓄積に注力した。手術前、手術後1週間、術後1ヶ月後、術後3ヶ月後、術後6ヶ月後、術後1年後の合計6ポイントにおいて、主に注意機能や遂行機能、語彙性言語機能、音韻性言語機能、短期記憶、いわゆる心の理論などを中心にデータ解析に注力した。ほとんどの検査バッテリーにおいて、術後悪化した神経機能は、術後3ヶ月には術前と同程度まで回復する一方で、一部の注意機能や遂行機能障害は術後半年以降も後遺したため、その責任ネットワークや切断部位についての検討を行った。特に後部帯状束を中心としたデフォルトモードネットワークや頭頂葉をハブとしたワーキングメモリーネットワークの離断例で回復不良な高次脳機能障害が示唆された。 また、2021年4月から2022年3月までの1年間に筆頭論文2本(原著1本、症例報告1本)を発表した。そのうち、原著論文1本では、近年注目されている膠芽腫に対する拡大切除術について、メチオニンPET画像を活用した拡大切除術の治療成績だけでなく機能予後についても詳細に解析し報告し、MRI造影領域に加えてメチオニン集積部位も覚醒下マッピング下に積極的に摘出することにより、上記の神経機能バッテリーで術前と比べて悪化なく良好な局所制御と長期生存が得られる可能性が示された。過去にメチオニンPETを活用した拡大切除術の報告はなく、世界初の報告となった。学会発表は6回行い、うち脳腫瘍学会と脳腫瘍の外科学会ではシンポジウムでの発表となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響もあり海外学会への参加がほぼ不可能な状況の中、オンライン参加可能なセミナーへの積極的な出席などを通じて、機能的結合から捉えた脳機能解析の知識習得に努めた。2020年4月から2022年3月まで30例の覚醒下手術を行い、それらの症例で術前後のMRIデータや高次脳機能検査データの蓄積を行った。引き続きデータの蓄積と解析を進める。衝動性・攻撃性亢進といった精神活動面の指標は対象が限定されていることもありデータ蓄積が困難であるが、引き続きデータの蓄積を進める。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる令和4年度は、蓄積したMRIデータの画像解析、特にデフォルトモードネットワークやサリエンスネットワークなどの脳内の主要なfunctional connectivityの解析と、各種高次脳機能データとの関連について検討を進めた上で、関連する学会発表や論文発表(2報以上)を目標に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響もあり、国内・国際学会への参加がほとんどなくなったことで次年度使用額が発生した。令和4年度は最終年度として研究成果の取りまとめと発表、とくに論文発表に必要な経費に主に充当する予定である。
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