研究課題/領域番号 |
20K17952
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
廣野 誠一郎 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (30554258)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 帯状束 / functional connectivity / 覚醒下手術 / 注意障害 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続いて安静時functional MRI(rs-fMRI)のデータを収集した。2022年度は新型コロナ第6波、第7波、第8波の影響を受け、新規の覚醒下手術が10例に限られたため、2017年以降に覚醒下手術を行った約90症例に対象を広げて、さまざまな高次脳機能検査データの蓄積に注力した。手術前、手術後1週間、術後1ヶ月後、術後3ヶ月後、術後6ヶ月後、術後1年後の合計6ポイントにおいて、主に注意機能や遂行機能、語彙性言語機能、音韻性言語機能、短期記憶、心の理論に加えて、MRI構造画像、メチオニンPET検査などの画像データ、てんかんコントロールの状況を中心に解析を追加した。注意機能の一部や遂行機能障害が術後半年以降も後遺した症例を抽出し、その責任ネットワークや切断部位についての検討を行ったところ、特に後部帯状束を中心としたdefault mode network;DMNや、頭頂葉を中心としたワーキングメモリーネットワークの離断例で回復不良な高次脳機能障害が多く認められた。帯状束の機能評価や切除可能性を検討するため、3種の新規術中注意課題を導入し、functional resectabilityを評価したところ、異常反応を認めて帯状束のconnectivityを温存した症例は、新規課題導入前に帯状束の機能評価なしに切断した症例に比べて術後の注意機能の回復が良好で復職復学を多く果たしたことが判明した。引き続き解析を続ける。 また、2022年4月から2023年3月までの1年間に論文2本(原著1本、症例報告1本)を発表し、学会発表は6回(うち3回はシンポジウム)行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響もあり海外学会への参加が困難な状況の中、白質コネクトームに関する国際シンポジウム(IAMBRAIN2022、2022年4月)への参加などを通じて、機能的結合から捉えた脳機能解析の知識習得に努めた。2020年4月から2023年3月まで40例の覚醒下手術が行われたが、コロナ禍の影響で当初の想定よりも少ないため、過去の症例も併せて合計約90例の覚醒下手術を対象に含めて、それらの症例で術前後のMRIデータや高次脳機能検査データの蓄積を行った。引き続きデータの蓄積と解析を進める。衝動性・攻撃性亢進や時間に関する見当識といった精神活動面の指標についても、引き続きデータの蓄積を進める。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる令和5年度は、4月にIAMBRAIN2023に参加予定であり、機能的画像データの統合解析や白質コネクトームに関する新規知見を収集しつつ、これまでに蓄積したMRIデータの画像解析、特にデフォルトモードネットワークやサリエンスネットワークなどの脳内の主要なfunctional connectivityの解析と、各種高次脳機能データとの関連について検討を進めた上で、関連する学会発表や論文発表(2報以上)を目標に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で研究進捗が当初の予定よりやや遅れているため、補助事業期間の延長を申し込んだ。次年度使用額は、研究の総仕上げと研究結果発表に使用する予定である。
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