研究実績の概要 |
最終年度では鉄制限食群とコントロール食群の2群におけるマウス脳血管を採取して、RT-PCRを用いて脳血管の炎症性変化を評価した。鉄制限食群において炎症性サイトカインであるNF-kBおよびTNF-αの有意な低下を認めた。一方でMMP-9, IL-1bは2群間で有意差は認めなかった。鉄制限には炎症性サイトカイン抑制効果があることを示した。本研究を通してマウス脳動脈瘤モデルを用いた研究において、鉄制限食群とコントロール群の2群での脳動脈瘤形成および破裂比較試験を行い、鉄制限食群において脳動脈瘤破裂を有意に抑制する結果となった。さらに血清フリーラジカル代謝産物であるd-ROMsの測定を行い、鉄制限食+脳動脈瘤誘発群においてコントロール食+脳動脈瘤誘発群と比較してフリーラジカルを抑制することを示した。最後に2群の脳動脈瘤組織を採取して、鉄染色(Beerling blue染色)、炎症細胞(CD68)染色、および酸化ストレス(8-hydroxydeoxyguanosine , 8-OHdG)染色を行なった。免疫染色において、鉄制限食群の脳動脈瘤では鉄陽性エリア、酸化ストレス陽性細胞、炎症細胞陽性エリアともに有意に低下していることを示した。以上より鉄の脳血管壁への集積が酸化ストレスの産生に関与しており、鉄制限を行うことで鉄の集積および炎症細胞の集積を抑制することがわかり、脳血管の変性において鉄イオンが重要な触媒であることがわかった。
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