研究期間を通して、もやもや病患者21名、対照群として動脈瘤6名、難治性てんかん5名から、脳表の動脈血管壁を検体として採取、total RNAの抽出、ライブラリ作成を行い、Agilent社製のマイクロアレイを用いて網羅的遺伝子発現解析を行った。 2019年から2021年にかけて、もやもや病患者11名、対照群として動脈瘤6名、難治性てんかん患者3名を用いたメッセンジャーRNAに対する網羅的遺伝子発現解析では88の発現変動遺伝子と、データベース解析では炎症や免疫応答のパスウェイに関わる遺伝子群がもやもや病で高発現、酸化的リン酸化とDNA修復のパスウェイの遺伝子群が低発現であった。発現変動遺伝子から10遺伝子を抽出し、定量PCRによる再現性の確認を行った。これらの結果を論文にまとめて投稿し、JNS Focus誌に採択され出版された。 2021年から2022年にかけて、もやもや病検体および、対照として難治性てんかん患者検体の集積とマイクロアレイによるデータの集積を行った。もやもや病群におけるサブ解析として感受性遺伝子として報告されているRNF213の一塩基多型であるp.R4810Kの有無による比較を行い、第80回日本脳神経外科学会学術総会シンポジウムにて発表を行った。また、もやもや病21名と非もやもや病11名の頭蓋内動脈血管壁におけるlong non-coding RNA発現についての網羅的解析を行った。308種類のlong non-coding RNAが発現変動しており、ゲノム上で隣接する遺伝子を標的遺伝子として抽出した。それらに対するGene Ontology解析ではantibacterial humoral responceやT-cell receptor signaling pathwayというGO termが有意であった。これらの結果を論文にまとめて投稿し、Journal of Neurosurgery誌に採択され出版された。
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