研究課題
本研究は大阪大学大学院医学系研究科および医学部付属病院の臨床研究倫理審査の承認(No.846)を得た上で、解析対象としている神経膠腫の血液サンプル、腫瘍サンプル、画像データ(MRI画像)、臨床データ(年齢、性別、生存期間、治療内容、治療反応性など)の蓄積を継続している。神経膠腫と平行して、髄膜腫に関しても同様の症例集積を行っており、両腫瘍を合わせるとすでに500例を超える症例集積を達成しており、さらに取得した血液サンプルからのゲノムDNA抽出も概ね完了している。精製したゲノムDNAを用い、SNPタイピングについては200例程度まで進めており、リファレンスデータを用いて、神経膠腫及び髄膜腫の疾患関連性の高いSNP探索の中途段階にある。SNPデータと、治療反応性や予後、腫瘍体細胞変異、画像特徴を「形質」として関連付けることで、臨床経過や腫瘍プロファイルに関わる宿主側遺伝的要因を解明途中である。腫瘍の凍結検体から同様にゲノムDNAを抽出し、主だった体細胞変異の解析を継続し、今後somatic-genetic interactionや新たなmolecular pathwayの同定に向けた取り組みを継続している。腫瘍のMRI画像からは、各シークエンスの信号強度、その分布(最大値、中央値など)、エントロピー、境界明瞭性などを数値化し抽出を行っており、分野横断的に遺伝子多型とRadiomicsの融合を目指している。
3: やや遅れている
遺伝子多型解析に必要な血液サンプルの集積は概ね順調に進んでいるものの、疾患頻度の観点から髄膜腫と比較して、神経膠腫のサンプル集積のペースが予定よりはやや遅れている状況である。また、SNPタイピングは解析効率の観点で一定数まとめて行う必要があるため、同様に神経膠腫において、やや遅れている状況である。
今後、遺伝子多型データベースを構築することで、既知の神経膠腫及び髄膜腫関連遺伝子を検証するだけではなく、 本邦独自の遺伝的特性に基づいた新たな知見を得ることを目標としている。また臨床・画像情報や腫瘍分子プロファイルとの横断的統合解析を行うことにより、人種・地域特異的な神経膠腫及び髄膜腫のリスクモデルの構築や病態解明、予防、創薬、個別化医療の実現を最終目標とする。
SNPタイピングは解析効率の観点で、一定数の蓄積がされてから実施するため、症例蓄積を待って次年度において解析が行われる予定であり、これに充当する予定である。
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