本研究では、髄芽腫をはじめとした難治性小児悪性脳腫瘍の分子学的背景や治療標的となりうる分子同定につながる知見を得ることを目的とし、臨床検体を用いた遺伝子解析およびサブタイプグルーピング、腫瘍細胞初代培養株樹立の試み、オルガノイドモデル作成実験、PDXモデル作成実験、腫瘍細胞を用いた腫瘍抗原発現確認などの研究を行った。髄芽腫は希少疾患であるため、比較対照として上衣腫、膠芽腫、星細胞腫等の悪性脳腫瘍の臨床検体や、非腫瘍性検体も使用した。結果として、本邦髄芽腫症例における臨床検体のサブタイプ分類を確認することができた。また、基礎実験においては、細胞培養モデルとして利用する上では膠芽腫に比して髄芽腫は樹立成功率が低い可能性が示唆されたが、一方で、group3に代表される一部のより悪性度の高い検体においては、培養モデルの生存性やPDXモデル樹立成功性が可能性が比較的高い可能性が示唆された。また、臨床検体を細胞解離しフローサイトメーターを用いることで、抗原抗体反応を用いて抗原性を確認する手法を利用できることを確認した。この手法を用いることで、それぞれの腫瘍検体が、それぞれ異なった抗原性を有している可能性を示唆することができ、さらに、腫瘍に対する抗体療法やCAR-T療法の研究開発にも即座に応用できる可能性を示すことができた。
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