研究課題
本研究は、急性脳主幹動脈閉塞に対する血管内再開通療法(血栓回収療法)における血栓回収機構の解明と治療の再開通効果向上を目指している。具体的には、閉塞部における血栓回収機器と血栓の相互関係についての実験的研究から、臨床使用可能な術中評価法と最適な治療手技戦略を確立することを目的としている。主な治療機器であるステント型血栓回収機器と疑似血栓によるモデルを用いて検討した。硬度を調節した疑似血栓を人工血管内に充填し、Trevoステント型血栓回収機器を展開し、血管撮影装置で行った二次元および三次元撮影データを解析した。ステント拡張率(正常部に対する閉塞部での最小径)の透視角度による変動は平均13%(四分位範囲:10-16%)で、一方向からの評価である二次元撮影での拡張率は、三次元である実際の拡張率の概算値として評価可能であった。二次元でのステント拡張率は、三次元撮影から得られたステント断面積と強い相関(相関係数:0.99)を認めた。このステント断面の外周と血栓の重なりが血管撮影でのステント内血栓像であり、これはステントが血栓を血管壁から圧排しながら接触して把持力を持つ、というデバイス血栓相互関係を反映するものと考えられた。今回の実験的検証から、ステント拡張率およびステント内血栓像についての二次元的評価は、より実際を表す三次元的測定と強い相関を認め、デバイス血栓相互関係を反映することが示唆された。これらの知見は血栓回収機構の解明に寄与するものと考えられる。また、同時にこれまでの臨床データの検討も行い、いくつか国際誌に論文発表した。
2: おおむね順調に進展している
実験的研究の基礎的な段階は、予定していた通りに終了し、その実験結果は本研究の着想に至った臨床データと矛盾しない結果であった。現在の段階においては、おおむね順調に進展していると考えられる。
今後は、別のタイプである吸引型血栓回収機器を用いた手技の追加を含めて血栓回収効果を検討し、閉塞部の性状に適した治療手技戦略を開発する。さらに急性脳主幹動脈閉塞の臨床例において、得られた評価法および治療手技戦略の臨床的有用性を検証する。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (6件)
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