研究課題
膠芽腫(GBM:Glioblastoma)の組織内では、GBM幹細胞(GSC)や分化型GBM細胞(DGC)などの腫瘍細胞、血管内皮細胞、マクロファージなどが混在し、腫瘍微小環境を形成している。この不均一性と微小環境は、治療抵抗性の主な要因として注目されている。本研究では、腫瘍微小環境におけるDGCの役割に着目して研究を開始した。患者由来GSCと、それを分化させて樹立したDGCのRNA-seqデータを比較し、DGCに特徴的な遺伝子群を抽出した。DGC シグネチャーは、TCGA などの大規模 コホートにおいて、間葉系(メセンキマル)サブタイプ、免疫反応、マクロファージに関連する遺伝子群と相関していた。実際に、in vitroにおいてDGCの馴化培地はマクロファージ細胞の遊走を促進し、in vivoではDGCとGSCの共移植によって、マウス脳腫瘍モデルの生存期間が短縮し、腫瘍組織内のマクロファージ浸潤が増加した。GSCとDGCのChIP-seqデータを解析し、H3K27ac領域を評価した結果、DGC特異的なエンハンサーとしてTEADが同定された。in vitroの解析においても、DGCではGSCと比較してYAP/TAZ/TEAD活性が増加しており、YAP/TAZの転写標的であるCCN1の分泌が増加していた。in vivoでは、CCN1をノックダウンしたDGCをGSCと共移植した群では、コントロール群と比較してマウス脳腫瘍モデルの生存期間が延長し、マクロファージ浸潤が減少していた。さらに、Integrin結合部位に変異を加えたCCN1のベクターを作製し、解析を行ったところ、DGCは、YAP/TAZ-TEAD-CCN1-Integrin経路を介して腫瘍関連マクロファージの浸潤を促進し、間葉系微小環境を形成することで、GSCと協調してGBMの腫瘍進行に寄与していることが示された。
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Acta Neuropathologica Communications
巻: 9(1) ページ: 29
10.1186/s40478-021-01124-7