研究課題/領域番号 |
20K17971
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
山口 泉 徳島大学, 病院, 特任助教 (70780005)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | PD-L1 / CSN5 |
研究実績の概要 |
マウスglioma stem cell(GSC)およびヒトglioblastoma(GBM)初代培養細胞 TGB-00におけるCOX-2阻害薬(celecoxib)添加による殺細胞効果とPD-L1発現低下作用とそのメカニズムを調べるため培養細胞を3群「① Celecoxib(30μM)」あるいは「② Celecoxib(60μM)」あるいは「③ 溶媒を培地に添加」に分けて24時間後にWST-8により殺細胞効果を評価した。Celecoxibを投与すると容量依存的にGSCとTGB-00のcell viabilityを抑制し、それとともにPD-L1の蛋白発現も有意に低下することが見いだされた。さらにPD-L1の蛋白発現低下のメカニズムを調べるためにqRT-PCRにてPD-L1のmRNAレベルを解析した。GSCではcelecoxibを投与することで、PD-L1のmRNAは逆に有意に増加していた。TGB-00においてもcelecoxibを投与することで、PD-L1のmRNAの値は変化していなかった。つまりcelecoxibによるPD-L1蛋白発現制御は転写レベルを制御するのではないことが分かった。PD-L1の転写後の制御に関連する分子としてCOP9 signalosome 5 (CSN5)が脱ユビキチン化を制御することで引き起こされるとの報告があったため、検討したもののCelecoxib投与によりCSN5の蛋白、及びmRNAの発現レベルには影響を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い、CelecoxibによるPD-L1の発現低下作用のメカニズムをマウスglioma stem cell(GSC)およびヒトglioblastoma(GBM)初代培養細胞 TGB-00を用いた検討を行った。これにより、in vitroにおいてPD-L1の蛋白発現低下作用は蛋白合成系ではなく、転写レベル以降のプロセスで制御されていることを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
CelecoxibによるPD-L1蛋白発現制御は転写レベル以下を制御することでなされていることが見いだされたので、今後はPD-L1の転写後の制御に関連する分子を検討し、メカニズムを解析していくことが必要と考えた。PD-L1の転写後の制御に関連する分子としてCOP9 signalosome 5 (CSN5)が脱ユビキチン化を制御することで引き起こされるとの報告が乳癌において報告されている。そのためCelecoxib投与によりCSN5の蛋白、及びmRNAの発現レベルをGSC、TGB-00細胞で検討したものの発現レベルに影響は認められなかった。その他、PD-L1の転写後の制御因子としてはFK506 binding protein 5(FKBP5)の関連がglioma細胞で報告されている。そのため、今後はCelecoxibを投薬したマウスGSCおよびヒトGBM初代培養細胞 TGB-00に対して、celecoxibを投薬し、FKBP5の蛋白、及びmRNAの発現に影響を及ぼすか検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 実験の結果が予測されたものと異なったため、購入物品の変更とその必要期間の変更が生じたため。 (使用計画) 試薬等の物品費として次年度の研究にて使用する。
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