改良型Post-bisulfite adaptor-tagging法を用いたWhole-genome bisulfite sequencing (WGBS)を行い、H3F3A遺伝子プロファイルに基づくグリオーマサブタイプ特異的なメチル化シグナルを示す領域を抽出した。結果、H3F3A G34変異群ではゲノム全体でCpG低メチル化およびCpGアイランド (CGI)の高メチル化を示すこと、テロメア近傍でのCGI高メチル化現象が相対的に減弱していることを同定し、過去アレイ解析で報告された知見を補填するデータが得られた。さらに独立成分分析によりG34変異グリオーマに共通する特異的なメチル化シグナルを抽出し、これが同変異をもつ骨腫瘍においても共有されていることを確認した。ChIP-seq解析でこの変異特異的メチル化シグナルはG34変異ヒストンH3.3の局在と関連性をもち、グリオーマ細胞株でG34変異をノックアウトするとこのシグナルが減弱することが分かった。これらの結果はH3F3A遺伝子変異によって生じた同ヒストンの局在の特徴やDNAメチル化に及ぼす影響を解明する一助となり、同変異をターゲットとした治療法の開発につながる知見となりうる。得られたデータは本邦最初のグリオーマのWGBSデータセットとしてJapanese Genotype-phenotype Archiveへデータ登録 (JGAS00000000197)を行った。本研究成果については研究期間内に論文発表(Sci Rep. 2020 Sep 30;10(1):16162)し、最終年度となる2022年度は研究成果について国際学会 (2022 CNS Annual Meeting)で報告を行った。研究期間に培った稀少サンプルからのメチル化解析技術を発展させ、現在liquid biopsyを用いた新たな診断技術の開発を計画している。
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