研究課題
悪性度の高いグリオーマ(膠芽腫)は、治療後にかならず再発し、平均余命は約1年である。ここ30年間、生存期間がほとんど延長しておらず、根治療法の確立にはさらなる病態の解明が必要である。最近、がんの再発や転移の原因としてがん幹細胞の存在が注目されている。グリオーマは強い浸潤能がある。そのため、腫瘍細胞は脳の正常部位に深く染み渡り、外科手術では全摘出できない。さらに化学療法(テモゾロミド)と放射線治療の集学的治療を行っても、治療抵抗性をもつがん幹細胞が増殖をくりかえす。再発の根源であるがん幹細胞をターゲットとした治療法は有効であると考えられる。しかし、特異性の高いバイオマーカーは不明のままである。また、テモゾロミドの効果を上回る薬物を見出すことができれば、根本的な治療法となることが期待される。私たちの研究グループはこれまでに、グリオーマ患者の外科切除検体から、がん幹細胞を樹立している。そして、がん幹細胞の細胞膜において、一過性受容体電位型チャネル(TRP)の一種であるTRPMLが局在することを免疫組織学的に同定した。以上の成果を踏まえて本研究は、脳腫瘍モデル動物におけるTRPML遮断薬の有効性を検証した。私たちの研究グループの先行研究の成果から、血液脳関門透過性がある医薬品を試験した。がん幹細胞をマウスの頭蓋内に移植した後に腫瘍が形成する期間内で薬物を経口投与すると、生存期間は有意に延長した。この医薬品はグリオーマの治療薬に適応できる可能性が示唆された。
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