研究課題/領域番号 |
20K17982
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
高橋 慧 国立研究開発法人理化学研究所, 革新知能統合研究センター, 特別研究員 (00852120)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Radiomics / Radiogenomics / Glioma / Domain shift / Deep learning |
研究実績の概要 |
本研究の目的はデータの分布の違い(一般にdomain shiftと呼ばれる)に起因するような性能の低下を克服するradiomics解析方法の開発を行うというものである。
本年度は研究実績として、first authorとして2編の英語原著論文、1編の英語レビュー論文、1編の日本語論文を上梓した。また、2回の国内学会発表、1回の国際学会発表を行った。共著者、雑誌など詳細は別記する。
令和2年度の研究の主たる目的はまたRadiomics解析に必要な腫瘍の関心領域(VOI)の作成の為の専用の深層学習装置(segmentator)を作成し、その性能がdomain shiftによりどの程度低下するのかを評価することであった。この結果をTakahashi, S. et al. Fine-Tuning Approach for Segmentation of Gliomas in Brain Magnetic Resonance Images with a Machine Learning Method to Normalize Image Differences among Facilities.として纏めた。上記の結果を得るにあたり得た知見と今後の脳腫瘍領域における、multi-omics analysisと機械学習の応用についての展望をTakahashi, S. et al. A New Era of Neuro-Oncology Research Pioneered by Multi-Omics Analysis and Machine Learning.として纏めた。また、上記の結果より得られた知見を肺がんのmulti-omics analysisへと一部応用したものをTakahashi, S. et al. Predicting Deep Learning Based Multi-Omics Parallel Integration Survival Subtypes in Lung Cancer Using Reverse Phase Protein Array Data.として纏めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は1.データセットの収集と準備。2.公開データセットを用いてsegmentator(MRI画像を入力として腫瘍と非腫瘍領域を自動的に判別する機械学習装置)を作成する。3.作成したsegmentatorの成績をAll Japan datasetで検証を行う。4.得られた知見から分布が異なるコホートにも性能が下がらないようなsegmentatorの作成を試みる。以上の4stepを行う予定であった。 概ね研究は順調に進んでいる。1. データセットの収集と準備。国立がんセンター169例、東京大学82例、を含む全国10施設から951例のデータを収集した。673症例について手動でVOIを作成し、criteriaに合致した544例(All Japan datasetと呼称する)を以下の研究に使用することにした。2. 公開データセット(BraTS2019)を用いて複数のsegmentatorを開発した。 またその性能を公開データセットにて検証を行った。3. All Japan datasetに対して、segmentatorが作成したVOIと人間が作成したVOIがどの程度一致するのかDice score等を用いて検証した。結果は論文内に詳記したが、domain shiftによる大きな性能の低下を認めた。 4. 複数のコホートに対して精度の高いVOIを作成できるようにsegmentatorの改良を行った。最終的には我々が開発したFine-Tuning法で各施設20症例以下の症例を使い、追加の学習を行うことで成績の低下を食い止めうることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
概ね順調に研究が進んでいると考えているので、当初の予定通り令和3年度の研究予定を推進する予定である。今年度は令和2年度で得られて知見を応用して、脳腫瘍の治療と予後に大きな影響を与えるIDH変異、TERT遺伝子変異の予測を行う、domain shiftによる成績低下が起こり難いradiomics解析方法を開発することを目指す。 具体的には以下の順で研究開発を行う予定である。
1. 公開データセットを学習用のデータとして深層学習を用いて悪性度とIDH変異、TERT変異など予後に与える影響の大きい遺伝子変異の予測を行うradiomics解析方法を開発する2. 1.で作成したradiomics解析方法の精度をAll Japan datasetにて検証を行う。現段階ではsegmentatorの結果と同様にdomain shiftによる成績の低下が起こるものと考えている。故に3. 得られた知見から多数のコホートに適応可能な強い汎化性能を持った神経膠腫に対するradiomics解析方法の開発を試みる。追加の学習を行わずに、成績の低下を防ぐ手法(多数のコホートに適応可能な強い汎化性能を持った神経膠腫に対するRadiomics解析方法)の開発が望ましいが、並行して各施設毎にごく少数の症例での追加の症例の学習を行うこと(Fine-Tuning法)で成績低下を防ぐ方法についても検討を行う。4. 最後に作成したradiomics解析方法の臨床現場への実装を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
設備の拡充がコロナウィルス拡大によって遅れたため
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