研究課題/領域番号 |
20K17984
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
清水 智弘 北海道大学, 大学病院, 助教 (60784246)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 特発性大腿骨頭壊死症 / 好中球 / 自然免疫異常 / 多発骨壊死 |
研究実績の概要 |
特発性大腿骨頭壊死症患者(ONFH)と変形性股関節症患者(OA)の手術時摘出サンプルを用いてパラフィンブロック薄切標本を脱パラ後、NETsマーカーとしてシトルリン化ヒストンH3(Cit-H3)、好中球マーカーとしてミエロペルオキシダーゼ(MPO)に対する蛍光免疫染色を行った。続いて、Wistar-Kyoto(WKY)ラットに好中球細胞外トラップ(NET)形成好中球及び非誘導好中球を尾静脈より投与し両側大腿骨頭及び周囲組織の組織学的検討を行った。ONFH群では全例NETsを発現し、OA群では発現しなかった。虚血によってNETsが発現したのか、NETsの発現によって虚血が起こったかを明らかにするため、動物実験による検証を行なったところ、NETs形成好中球を投与した群では、大腿骨頭周囲組織のNETs発現とHIF-1αの発現上昇が観察され、大腿骨頭の骨壊死が確認された。NETs非誘導群ではこれらの現象は出現しなかった。このことから、動物実験の結果からNETs誘導によって、局所的な血流低下と大腿骨頭の阻血が起こり、結果的に骨壊死が誘導される可能性が示唆された。臨床検体の結果からも、ONFHの発生にNETsの発現が関連することが示唆された。 特発性大腿骨頭壊死症の中で、多発骨壊死を生ずる症例と大腿骨頭のみにとどまる症例が存在することがすでに分かっているが、骨シンチでの評価が診断基準であった。しかしながら骨シンチは全身で撮像する際には解像度が劣るため、診断精度には注意が必要と考えられる。そこで申請者は特発性大腿骨頭壊死症の症例の全身MRI検査、骨シンチ検査を行い比較検討したところ、無症候性壊死の検出には骨シンチが劣る可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
特発性大腿骨頭壊死症発生が好中球異常と関連することを示すことができ、当初の研究計画の基盤となる結果を得ることができた。多発骨壊死の臨床的評価法を確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
再現性の高骨壊死モデルを作成し、特発性大腿骨頭壊死症発生のメカニズムを調査する予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初のプロジェクト、予定より効率的に結果を得ることができた。 次年度に繰り越し、種を変えた検討とメカニズム解析に繰り越して使用する予定である。
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