近年、変形性膝関節症(OA)を含め様々な慢性疾患において老化細胞の組織中への蓄積と病態進行の関連性が示されている。また、老化細胞を選択的に除去可能な薬剤を関節内投与することでOA進行を抑制可能であることが報告されている。本研究では老化軟骨細胞の排除と滑膜間葉系幹細胞(MSC)の単回関節内注射の組み合わせによるOA治療効果の増強を検討し、より効率的なOA治療の開発を目指す。 ラットOAモデルを用いて、関節軟骨において経時的に老化細胞数およびsenescence-associated secretory phenotype(SASP)因子であるIL-6やMMP-13の発現が増加することを明らかにした。その後、老化細胞除去薬により滑膜MSCの効果が増強されるかを明らかにするために、老化細胞除去薬であるABT-263と滑膜MSCをOAラットに関節内投与した。現在、膝関節軟骨組織を解析中である。 同時に、ラットOAモデルにおいて半月板細胞の老化も起こっていることを確認した。そこで独自のスクリーニング系を開発し、ラット老化半月板細胞に特異的に細胞死を誘導可能な薬剤を発見した。この薬剤はヒトOA患者由来半月板細胞においても、効率的に老化細胞を除去可能であることを明らかにした。現在、本薬剤のin vivoでの治療効果を検証中である。 また一方で、OA患者の滑膜から培養した滑膜MSCには老化細胞が多数混入していることがこれまでに知られている。そこで我々は老化細胞除去薬ABT-263によりこの混入した老化細胞を効率的に除去することを試みた。ABT-263処理により、SA-β-gal染色に陽性を示す老化細胞の割合は有意に低下し、コロニー形成能、増殖能、多分化能が有意に向上し、OA患者由来の滑膜MSCの高品質化に成功した。
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