高齢化に伴い、腰痛による運動器障害はロコモティブシンドロームをもたらし要介護者の増加と関連している。腰痛の原因の一つに椎間板変性が関与しており、このメカニズムを解明することは社会的に喫緊の課題である。我々は、1)椎間板変性は炎症性細胞浸潤に起因すること、2)炎症関連サイトカインおよび分解酵素を同定した。変性メカニズムの多くは内側の髄核変化について報告されるが、申請者は椎間板外層からの変性メカニズムに注目している。トロンビンの椎間板へ作用については炎症性サイトカインが分泌されることが報告される(Huang BR et al. Sci Rep 2017)。しかし詳細なメカニズムについては明らかにされていなかった。先行研究においてトロンビンがMCP-1やMMP-3を介して椎間板変性をもたらす一因となる可能性について我々が世界に先駆けて報告をした。 Ex vivoの実験として、マウスの尾椎から顕微鏡を使用して採取した椎間板に、トロンビンを作用させることによって分泌されるサイトカインのうち、1)MCP-1が直接的にマクロファージの遊走に関与していること、2)MMP3が椎間板変性に主要な因子であること、さらに 3)VEGFの発現も、椎間板組織のPCR、免疫染色および上清中のELISAによって確かめられた。また、In vivoの実験としてマウスの尾椎へのpunctureモデルを用いて、椎間板組織でのVEGFの発現および血管新生を確認した。メカニズムとして、椎間板における細胞内シグナルの検討としては、pP42/44およびpAKTが重要な役割を示すことがわかった。
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