研究課題/領域番号 |
20K17997
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
徳武 克浩 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (90822289)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 機能的電気刺激 / 運動麻痺 / 再生医療 / neuro-modulation / 神経幹細胞移植 |
研究実績の概要 |
微細加工技術(Photo-lithography)を用いてフレキシブルカフ型電極を作製した。これにより、低侵襲で柔軟性を持ち安定して刺激可能な末梢神経に対するインターフェイスが利用可能となった。また埋込が可能となるよう無線給電システムを用いて送電/受電デバイス間での情報伝達ができるシステムとし、送電周波数の切り替えにより電極を設置した複数神経への選択的刺激を可能とした。さらに刺激電流の解像度を高めることで、電気刺激による運動がオンオフではなく緻密に制御できるように改良を行った。これらの成果によって、末梢神経刺激を通して目的とする動作を再現する制御システムが構築された。 次に健常ラットの後肢関節角度を位置座標として把握し、複数神経に上記刺激制御システムを用いることでつま先の目標位置への追随を可能とした。また直前に腓骨神経切離と電極を設置したラットに対し、トレッドミル上で健側前肢の動きをトリガーとした足関節背屈刺激が可能なことを確認した。これにより適切な位置情報やタイミングの情報があれば、電気刺激制御システムを用いて運動を制御可能なことが示された。 これらの応用として、脱神経筋モデルラットへの末梢神経内神経幹細胞移植による脱神経筋再支配と上記電気刺激制御システムを併用することで、本来であれば動くことのない脱神経筋に対し健常ラットと同様につま先の目標位置への追随・制御が可能となった。これは未だ治療法のない下位運動ニューロン疾患・損傷による広範な麻痺に対しての新たな麻痺治療技術となりうる重要な知見であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多チャンネル埋込型Nerve machine interfaceの開発の初期段階として、マイクロ電極の製作と無線給電システムの小型化および埋込を計画した。いくつかの電極を考案し実験を行ったが、刺激安定性、低侵襲性の面からカフ型電極を選択・作成することで、実験に対する再現性が担保されるようになった。また送電デバイスと受電デバイスを分けて作成し、無線給電システムでの実験が可能となった面で一定の成果が得られた。しかしながら、電極としての長期安定性の確認やデバイスの体内への埋込自体はまだ未実施であり今後の課題である。しかしながら、送電周波数の切り替えによる神経の選択的刺激が可能となったことにより、次年度に計画していた歩行解析や脱神経筋モデルラットへの実験を先立って行うことが出来たため、全体としてはおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
デバイスとしては電極の長期安定性に対する評価や小型化による埋込の実現を目標とする。またさらなる高度な運動制御や歩行制御を目指す中で、健常ラットおよび脱神経筋モデルラットでの解決すべき課題の抽出を行い、それに対する対応策を考案していくことでより実現可能性を高めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度限定の別予算があり、そちらを物品費として補填したため次年度使用額が生じた。実験に係る物品費及び消耗品の使用に企てる。
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