研究課題
脊髄損傷や筋萎縮性側索硬化症などの外傷・疾患では脳機能が正常に維持される中で広範な神経原性筋萎縮が進行し、生命維持が困難な高度な障害へと発展していく。本研究は、このような難治性麻痺を解決する手段として、(1)末梢神経幹内神経幹細胞移植による麻痺筋近傍での脊髄様構造の神経節誘導、(2)末梢神経にアクセス可能で複数制御可能な埋め込み型電気刺激装置の開発、を目指している。この両技術を統合することにより、治療法のない難治性麻痺患者に対する全く新しい新規治療技術開発を目指して研究を行ってきた。今年度は、まず至適なタイミングで有効な刺激を行い麻痺筋を制御することで、トレッドミル上での歩行リズムや歩容の改善を確認させることを目標とし、下垂足モデルの歩行ラットに対し右前肢の動きを検出して一定時間後に刺激を出すことで遊脚時に左後肢を背屈させることに成功した。この技術を脱神経筋モデルに対する幹細胞移植後の再支配筋にも応用したが、問題なく予備動作の一定時間後に任意の刺激を入れることが可能であった。今までのフィードバック制御に加えて、予備動作に連続したスムーズな動きも付加可能となり、麻痺患者への応用の選択肢を広げることができた。最終年度として、これまでの成果である、脱神経筋に対する神経幹細胞移植による神経節誘導と機能的電気刺激の融合について、また複数関節制御について論文化を行った。全体を通し、不可逆性の筋萎縮に陥る脱神経筋に対して末梢神経幹内神経幹細胞移植による麻痺筋近傍での脊髄様構造の神経節誘導、そこに高精度にデバイスを用いて介入可能であることを実証できた。この治療体系は治療法のない神経障害に苦しむ患者に対する新規治療の一手になりうる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
International Journal of Molecular Sciences
巻: 23(15) ページ: 8760
10.3390/ijms23158760
Sensors (Basel)
巻: 22(19) ページ: 7198
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