研究課題
本研究は、関節リウマチ(RA)滑膜細胞及びCAIAモデルマウスの滑膜組織・関節軟骨に、p21が与える影響を明らかにすることを目的とした。Vivoではp21欠損マウスと野生型マウスにCAIAモデルを作成。肉眼的関節炎評価、マウス膝関節滑膜及び関節軟骨のHE染色、サフラニンO染色及び各免疫学的組織染色(IL-1β、TNF-α、p-IKKα/β、MMP-3、MMP-9、MMP-13、F4/80、CD86、CD206)による組織学的評価、ELISA法によるマウス血清のサイトカイン評価(IL-1β、IL-6、TNF-α)を行った。肉眼的評価ではp21欠損群で関節炎スコアは高く、組織学的評価でもp21欠損群でより強い滑膜炎と関節軟骨の破壊を認めた。血清中サイトカインはいずれもp21欠損群で高値であった。免疫学的組織染色で、滑膜組織と関節軟骨において各染色ともp21欠損群で染色性の増強と、滑膜組織におけるマクロファージ浸潤の増加を認めた。VitroではRA及びOA滑膜細胞を用い、コントロール群、nonspecific siRNA導入群、p21 siRNA導入群の3群とした。各群の細胞をIL-1βで刺激し、RT-PCR(p21、IL-6、IL-8、MMP-3、MMP-9)と、Western blotting(WB)(p-IKKα/β、p-IκBα、IκBα)で評価。RT-PCRではRA細胞でp21発現が低下し、その他の発現は高かった。IL-1β刺激後は各項目ともp21siRNA群でのみ上昇を認め、その上昇はRA細胞でより増強された。WBではp21ノックダウンによりIKKα/β、IκBαのリン酸化とIκBαの分解がRA細胞で増強していた。以上よりRAではp21の発現低下が滑膜炎の増悪に寄与していると考えられ、p21がRAの新たな治療ターゲットとなる可能性が示されつつある。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、in vivoにp21欠損マウス関節炎モデルの滑膜組織・関節軟骨においてNF-kB経路を介した滑膜炎の増悪及び関節軟骨の破壊が起こっていることが示唆され、in vitroでもp21の発現抑制によりOA滑膜細胞に比較してRA滑膜細胞でNF-kB経路を介した炎症がより増悪していることが示唆された。これらの結果よりRAではp21の発現低下が滑膜炎の増悪に寄与していると考えられ、p21がRAの新たな治療ターゲットになる可能性が示された。これまでの結果をまとめ、論文投稿しScientific Reportsにacceptとなった。
今後の研究推進方策として、さらなる炎症経路の検索や炎症増悪の機序の解明のために令和3年度に続き、in vitroでRA滑膜線維芽細胞におけるp21の発現を制御し、軟骨組織破壊にp21がどのように関与するのかについての検討を継続して行う予定である。今後の検討項目としては、RT-PCR法やWestern blotting法で、関節リウマチの病態に関与する他の炎症性サイトカインや、それぞれの炎症性サイトカインの下流のシグナル伝達経路に関して、さらなる検討項目を追加する予定である。in vivoでも、CAIAモデルの全身性の炎症の検討や、他の関節炎モデルにおけるp21が関与する病態の検討を行っていく予定である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Scientific Reports
巻: 11 ページ: 12516
10.1038/s41598-021-92055-9