研究実績の概要 |
本研究では、ナビゲーションシステムと圧センサーを用いて未固定遺体の健常膝関節の関節摺動面圧を明らかにし、関節面圧を基準とした新たな観点からの軟部組織評価方法の確立を目指している。本研究の3つの柱として未固定遺体の健常膝関節の関節摺動面圧の計測、手術操作が関節摺動面圧に与える影響の評価、関節摺動面圧と関節動態との関連性検討を実施することとしていたが、研究で使用する未固定遺体の確保が予定通りに進まず、未固定遺体を用いた解析が十分にできなかったため、先行研究における健常膝関節のデータ解析を行い、今後の関節摺動面圧評価における参考データとすることとした。 先行研究で使用した未固定遺体の健常膝15膝のナビゲーションデータを用いて解析を行うと、健常膝関節は伸展位から屈曲に伴って脛骨が大腿骨に対して連続的に内旋し、屈曲30度から60度まではほぼ回旋せず、屈曲60度から最大屈曲位まではさらに内旋する動態を示した。伸展位、屈曲30度、60度、90度において、脛骨を他動的に最大内旋位、最大外旋位とさせて回旋角度を記録すると、その内外旋角度の中央値は他動的に膝関節を屈曲させた際にそれぞれの屈曲角度における脛骨回旋角度にほぼ近似していた。統計解析を行うと、これらの値にはそれぞれ有意な相関(r=0.99, 0.92, 0.86)が見られた。同様の手技を大腿骨と脛骨間アライメント内外反についても行ったところ、伸展位、屈曲60度、90度において有意な相関(r=0.96, 0.96, 0.93)を認めた。これらの結果から、膝関節屈曲に伴った回旋ならびにアライメントの内外反動態は各屈曲角度における軟部組織バランスに強い影響を受けることが示唆された。この結果は軟部組織バランスを摺動面圧で評価しようとする本研究を進める上で重要な知見であり、今後未固定遺体膝に対する圧センサーを用いた評価を重ねて検討を進めていく。
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