本年度は未固定遺体膝に対する研究を行うとともに、これまでの研究データと合わせて解析を行った。健常膝の大腿骨脛骨関節面に圧センサーを挿入し、徒手最大力で内外反ストレスをかけてデータを解析すると、膝関節伸展位において内反ストレスでは内側関節面圧は平均2.64MPa、外側関節面圧は0MPa(接触なし)であり、外反ストレスでは内側関節面圧は平均0.23MPa、外側関節面圧は平均2.63MPaであった。しかし、膝関節を伸展位から屈曲させると、関節面に挿入した圧センサーの設置位置が変わってしまい、再現性が得られていないことが確認された。この結果を受けて、様々なセンサーシートの固定方法を試行したが、伸展位以外に十分な再現性を得られる方法を確立することができなかった。また人工膝関節置換術を行った後の解析においては、剛性の硬い人工関節の関節面の剪断応力にフィルム型センサーシートが耐えられず、測定途中でセンサーが破綻して異常なデータとなっていることも確認された。 本研究成果として、まず健常膝関節は伸展位から屈曲に伴って脛骨が大腿骨に対して連続的に内旋し、屈曲30度から60度まではほぼ回旋せず、屈曲60度から最大屈曲位まではさらに内旋する動態を示した。伸展位、屈曲30度、60度、90度において徒手的に最大内旋および最大外旋させた時の回旋中央値は、脛骨回旋動態に近似し、内外反についても同様の結果となったことから、回旋ならびに内外反動態は軟部組織バランスに強い影響を受けることが示唆された。次に徒手的な軟部バランス評価を行う際に内側軟部組織の評価においては徒手最大ストレスをかける手法で再現性が高く、外側軟部組織においては関節面にレトラクタを挿入して評価する手法で再現性が高いことが明らかとなった。また関節摺動面圧を測定する際には圧センサーの固定方法とセンサーの強度について再考が必要との結論となった。
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