研究課題/領域番号 |
20K18001
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
阿漕 孝治 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (00624991)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 変形性膝関節症 / 疼痛 / 骨粗鬆症 / 神経成長因子 / 破骨細胞 |
研究実績の概要 |
本邦における変形性膝関節症(膝OA)は、2530万人と多くの患者がいるにもかかわらず、膝OAによる変形が患者の主訴である痛みに直結しないなど、その痛みのメカニズムは不明瞭であった。研究代表者は、Arthritis UK Pain centreとの共同研究によって変形が同じでも痛みのある膝とない膝には、神経成長因子の発現、破骨細胞の発現、滑膜炎、軟骨下骨の感覚神経増生に違いがあることを組織学的に初めて明らかにした。本研究では、さらにそれを発展させ、我々が明らかにしてきた膝OAの痛みの組織学的変化が、MRI画像で的確に捉えることが可能か、またどのようなOA進行時期、どのような背景をもつ症例にその変化が認めるかを動物モデルおよびヒト組織を用いて解明する。本研究によって、ラット膝OAモデルにおいて卵巣切除による骨粗鬆症は、軟骨下骨破骨細胞の活性化により軟骨石灰化層、軟骨下骨を中心にOAを進行させる可能性を明らかになった。また、膝OAにおいてMRIで骨髄浮腫を認める骨組織では破骨細胞密度や骨軟骨移行部のNGF発現が増加すること、滑膜における滑膜炎や血管増生はOA早期から認め、早期から膝OAの痛みなどの病態に滑膜病変が重要になることを明らかにした。OAの痛みの治療ターゲットを実臨床で評価することが可能になり、それら因子をターゲットにした膝OAの痛みの治療戦略を構築できると考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下記の様に3つに分けて研究を進めている。 ①内側半月板切除(MMx)によるラット膝OAモデルに卵巣切除(OVX)による骨粗鬆症を追加することが軟骨下骨破骨細胞活性を含む膝局所組織に与える影響について調査した。4群(Sham群、OVX群、MMx群、OVX+MMx群)に分け、比較検討した。破骨細胞密度、軟骨下骨のOARSI scoreはOVX+MMx群で他の3群と比較し有意に上昇していた。ラット膝OAモデルにおいて卵巣切除による骨粗鬆症は、軟骨下骨破骨細胞の活性化により軟骨石灰化層、軟骨下骨を中心にOAを進行させる可能性がある。 ②膝OAにおいて、BMLを認める骨組織では、破骨細胞活性および神経成長因子(NGF)発現が有意に高いという仮説を検証した。破骨細胞密度およびNGF発現は、内側脛骨プラトーのBML(+)部分では、内側脛骨プラトーのBML(-)部分および外側脛骨プラトーより有意に高かった。膝OAのBMLによる痛みの増悪にはNGF発現や破骨細胞活性の増加が関与すると考えられた。 ③本研究では、OAの進行における滑膜の組織学的変化を明らかにすることを目的とした。 早期膝OA、進行期膝OA、非膝OAとして前十字靱帯損傷後3ヶ月以上経過した靱帯再建症例の膝蓋下脂肪体表面の滑膜を採取し組織学的に評価した。非膝OA、早期膝OA、進行期膝OAの滑膜炎や、血管増生、血管周囲浮腫、線維化は早期および進行期膝OAは非膝OAと比較して有意に高値であった。さらに、進行期膝OAは早期膝OAよりフィブリン沈着と線維化が有意に高値であった。滑膜における滑膜炎や血管増生はOA早期から認め、早期から膝OAの痛みなどの病態に滑膜病変が重要になることを示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
概ねの研究結果がでており、検体を増やすと共に、研究成果発表および論文執筆を行っていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
概ね順調に研究が進んでいるが、追加実験および論文投稿料、学会発表経費が必要になるため。
|