研究課題/領域番号 |
20K18003
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
舛田 哲朗 熊本大学, 病院, 特任助教 (20794530)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 前十字靱帯再建術 / 遺残組織 |
研究実績の概要 |
発生過程における細胞系譜追跡の手法を用いた解析によって、前十字靭帯(ACL)発生過程中にScleraxis(Scx) とSRY-box containing gene 9(Sox9)を共発現する細胞がみられることが明らかとなっている。本研究の目的は、ACL再建術において遺残組織中のScx とSox9発現細胞の関与を解析、確認することである。 当該年度においては、(1)ラットのACLを切離し、切離前、切離後2日、1週、2週、4週に遺残組織を採取し、real-time PCRにてScx、Sox9の発現を確認した。Scxの発現は切離前と比較し、切離後に増加し、切離後2週に最大値となりその後低下がみられた。Sox9の発現は切離後も切離前と比較し、発現の変化はみられなかった。(2)遺残組織を温存したラットACL再建モデルと郭清モデルを作成し、経時的に再建靭帯の力学的強度を計測した。術後6週、8週に膝組織を採取し、大腿骨、脛骨を固定後、張力測定器を用いて、引っ張り破断試験を行った。術後6週の結果では遺残組織温存モデルでは、郭清モデルと比較し移植腱の最大破断強度は有意に高値であり、最大破断応力も高い傾向がみられた。術後8週の結果では、遺残組織温存モデルでは、郭清モデルと比較し最大破断強度、最大破断応力ともに高い傾向がみられたが、有意差はみられなかった。(3)ScxGFP遺伝子改変ラットを用いた遺残組織を温存したACL再建モデルにおいて, 術後4週に組織学的評価をおこなったところ、再建靭帯内にScx発現細胞が認められた。 以上の結果より、ACL再建術後の移植腱再靭帯化の過程において、Scx発現細胞の関与が考えられ、遺残組織を温存することで移植腱内のScx発現細胞を増加させる可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ScxGFP遺伝子改変ラットの繁殖が遅れており、予定の標本数が達成できていないため、当初の予定よりやや遅れていると判断した。しかし、標本数以外の問題はなく、現在ラットの繁殖も安定してきていることから、次年度の解析は予定通り進めることができると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度と同様の動物モデルを用いて、遺残組織温存モデルと郭清モデルを作成し、2週、4週、12週時にそれぞれ組織学的および力学的評価を行う。組織学的評価では、Scx、Sox9発現細胞の関与を確認するため、再建靭帯のCollagen type-1, TenomodulinおよびScx, Sox9の免疫染色をおこなう。また、Second harmonic generation観察により再建靭帯のコラーゲン線維配列を評価する予定である。
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