がん凍結免疫は、がん細胞を凍結することによりがん抗原が全身に放出される現象として報告された。さらに破砕されたがん細胞が全身の免疫を賦活化する Abscopal効果もこれまで報告されている。凍結された組織では細胞内や細胞外の水分が凍結することにより、適切な浸透圧の維持が困難となり細胞が破裂することや、細胞内脱水によるネクローシスが生ずるとされている。破壊された組織は、細胞周囲に腫瘍抗原(ネオアンチゲン)を放出し、樹状細胞などの抗原提示細胞表面のMHC上に提示され、結果的にT細胞を活性化すると考えられている。 自験例では、2010年から2017年に転移性脊椎腫瘍97例に対して腫瘍脊椎全摘術(TES) と同時に凍結処理骨移植による椎体再建を行ったところ、46例で肺転移やリンパ節などの遠隔転移を有していたが、このうち約10%程度の症例で術後全身治療を行わず、転移巣の自然縮小を認め、凍結免疫によるAbscopal効果が関与していた可能性を報告した。 一方で、腫瘍細胞は様々な免疫応答から回避するメカニズムを有し、臨床的には凍結免疫のみでは十分な効果が得られているとは言えない。そこで、転移性骨腫瘍に対する凍結腫瘍骨移植よる凍結免疫の賦活化作用、及び免疫チェックポイント阻害薬による併用療法の上乗せ効果検討する実験を行った。 我々はアブスコパル効果を検証するために、様々ながん腫を用いて免疫チェックポイント阻害薬との併用療法の骨転移モデルを作成した。乳がん細胞株では凍結腫瘍骨移植を行うことで、転移性骨腫瘍に対するアブスコパル効果は確認出来たが、免疫チェックポイント阻害薬との併用効果は認められなかった。転移性骨腫瘍によるアブスコパル効果を検証したところ、CD-8陽性の免疫細胞の転移巣での増加やIFN-γの上昇が観察されたが、有意差は認められなかった。現在、最終年度までのデーターを検証し、他のがん腫での解析を進めている。
|