ヒト骨肉腫細胞においてPDZD8をノックダウンすると細胞死が誘導されるが、その時にミトコンドリア鉄の蓄積量とノックダウンの効果に相関が認められた。このため、鉄蓄積を惹起する阻害薬によって阻害さ入れるシグナルがPDZD8に関連するとの仮説に基づいて阻害剤スクリーニングを行った。阻害剤処理により鉄蓄積を示したものの中にsunitinib(SUN)が認められた。そこで、ヒト胃がん細胞株TMK1およびMKN74を対象に、sunitinib(SUN)とpterostilbene(PTE)の併用による効果をin vitroおよびin vivoで検討した。SUNまたはPTEを単独で投与した場合と比較して、共投与は顕著な細胞増殖抑制を引き起こし、酸化ストレスが顕著に増加した。SUNは、ミトコンドリアのFe2+の著しい保持と関連していた。SUN処理細胞は、PDZD8の発現を減少させた。両細胞でPDZD8をノックダウンするとFe2+の保持が誘導され、siPDZD8+PTEはSUN+PTEの組み合わせと同様に酸化的リン酸化を抑制し細胞増殖を顕著に抑制した。ヌードマウス腫瘍モデルでは、SUN+PTE投与により、SUN単独投与と比較して顕著な抗腫瘍効果が確認された。PDZD8はSUNのオフターゲットとして新たに発見された可能性があり、PTEとSUNの併用は胃がん細胞株に対する抗腫瘍活性を有意に促進することが示された。このように、PDZD8はSUNのオフターゲットとして示唆され、PDZD8のミトコンドリアー小胞体間の鉄輸送への関与が示唆された。
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