研究課題/領域番号 |
20K18025
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
米澤 宏隆 金沢大学, 附属病院, 医員 (20818942)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 悪性軟部腫瘍 / 神経再生 / 一期的神経再建 / 担癌神経グラフト |
研究実績の概要 |
当初ヌードラットを用いて,腫瘍を巻き込んだモデルを作成し,それを広範切除し,液体窒素処理したのちに再移植するモデル(自家神経移植モデル)を検討したが,この場合,液体窒素処理による殺細胞効果が不十分で局所再発したのか,それとも手術手技が不十分で局所再発したかの鑑別が難しかった。また,広範切除を行った場合、神経周囲の筋肉も十分つけて切除する必要があるため、神経移植を行った後の周囲環境が大幅にかわることが予想された。そのため、今回の実験系をアログラフトモデル(同種移植)に変更することで,液体窒素処理による殺細胞効果を十分に確かめることができ、さらには、神経の周囲の環境(筋肉などの軟部組織)を変えることなく、神経再生能力を十分に評価できると考えた。また局所再発を評価するにあたり、12週では短いと考えて、モデルの週数を24週、48週に設定した。 HT1080株をヌードラット神経周囲に播種させ,坐骨神経が巻き込まれた腫瘍モデルを作成した.この腫瘍を坐骨神経ごと切除し,取り出した神経を液体窒素処理し,別のヌードラット坐骨神経5mm欠損モデルに移植した.24週,48週で神経生理学的評価,運動機能評価および組織学的な評価を行った.結果としては経時的な筋湿重量,神経伝導速度,組織学的な神経再生所見が認められ,腫瘍の再発を認めていない。現時点のデータからは液体窒素処理によって担癌神経グラフトは殺細胞化され安全に使用できることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず液体窒素処理担癌神経グラフトの安全性、神経再生能力を確かめる研究を行った。こちらに関しては、おおむね順調に進み、液体窒素処理担癌神経グラフトの安全性と有用性を示すデータを得ることができた。しかし、Triton X-100を用いた液体窒素処理担癌グラフトの洗浄効果を示す研究は着手できていない。そのため、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題として、液体窒素処理担癌神経グラフトをいかに強化し、再建後の神経再生を促すかが課題である。その一助としてTriton X-100などの化学洗浄の方法があるが、単回の手術中の短い時間で行うには、効果が限局的であることが予想される。新たな方策も含め検討していく必要があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
S100やニューロフィラメントといった抗体試薬などが、5万円を超えるものが多く、事務手続き上、翌年度にした方が煩雑ではないと判断したためである。
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