研究課題
神経に近接する軟部肉腫では、神経の合併切除に伴う神経脱落症状が問題となっていた。当教室で開発した液体窒素処理骨の手法を神経に応用し、液体窒素処理を行うことで、軟部肉腫に近接もしくは巻き込まれた神経グラフトを神経再建に再利用できるかどうかを検証するための実験を行った。2種類の実験を行った。実験1は、液体窒素処理神経の神経再生能力を評価する実験系である。Wistarラットを用いて坐骨神経10mm欠損モデルを作成した。それらを1.自家神経移植群、2.液体窒素処理自家神経移植群、3.切除群に分けて、4週、12週、24週、48週各群6匹ずつ評価した。実験2は、液体窒素処理担癌神経の有効性、安全性を評価する実験系である。まず、担癌神経グラフトを作成するために、HT1080株をヌードラット坐骨神経周囲に移植し、坐骨神経が巻き込まれた軟部腫瘍モデルを作成した。この腫瘍を坐骨神経ごと切除し、取り出した神経を液体窒素処理した。そして、処理の後の神経を、別のヌードラット坐骨神経5mm欠損モデルに移植した。24週、48週で各群6匹ずつ神経生理学的評価、運動機能評価および組織学的な評価を行った.結果であるが、実験1においては、神経生理学的、組織学的な所見からも、液体窒素処理神経は、自家神経に比べて優位差を認めなかった。S100染色領域は、液体窒素処理神経よりも自家神経の方が、有意差をもって大きかった。実験2においては、結果としては経時的な筋湿重量、神経伝導速度、組織学的な神経再生所見が認められ、48週モデルにおいても腫瘍の再発は認められなかった。動物実験モデルの段階ではあるが、液体窒素処理担癌神経グラフトは、神経再生能力を有し、48週という期間においては、腫瘍再発を認めなかった。
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