研究課題
【背景】当科では脊椎転移に対して術前腫瘍塞栓後に液体窒素処理骨移植を併用した根治的切除術を行い、これまでに他の転移巣を有する症例において、術後無治療にもかかわらず他の転移巣が自然縮小した症例を4例(8%)にみとめ、一連の治療により癌に対する免疫上昇効果が得られたと考えた。術前塞栓により椎体内腫瘍の広範囲の壊死をみとめており、術前腫瘍塞栓による効果が考えられた。【目的】①腫瘍塞栓術による腫瘍壊死効果をen bloc切除標本を用いて評価すること。②腫瘍塞栓術後の免疫上昇効果を前向きにモニタリングし検証することである。【方法】①2010年より術前腫瘍塞栓術を併用した根治的切除を行った脊椎転移症例の内、en bloc切除標本により腫瘍壊死を評価することが可能であった50例の切除標本を評価した。②2019年4月より、術前塞栓術を併用した脊椎転移手術13例において、塞栓前・術後1か月・3か月時点で末梢血単核細胞(PBMC)を採取し、術中採取した腫瘍細胞を用いてT細胞応答を評価するIFN-γ ELISPOT assayを行い、免疫モニタリングを行った。【結果】①腫瘍壊死をみとめた頻度が高い順で平滑筋肉腫100%(3/3例)、腎細胞癌70%(16/23例)、肺癌67%(4/6例)、甲状腺癌50%(3/6例)であった。Hypervascularな脊椎転移である腎細胞癌、平滑筋肉腫転移において腫瘍内血管に多数の塞栓像がみとめられ、最大約30-40%の壊死をみとめた。一方でほとんどの症例において壊死範囲は限局しておりviableな腫瘍が残存していた。②一部の症例において術前に比べて術後1か月時点にてIFN-γ産生細胞の増加をみとめ、T細胞応答の活性化が示唆された。【考察】塞栓術の癌免疫上昇効果は他分野においても報告されており、脊椎転移に関しても同様の免疫効果が存在することが示唆された。
3: やや遅れている
当初推定された症例数より、やや下回る症例数で検証を行っているため。コロナ禍により、実験の進行に一部支障をきたした時期があったため。
今後も引き続き、転移性脊椎腫瘍症例に対する治療を行っていく。その際、適格基準をみたす症例の同意を取得し、本研究にエントリーしていく。
当初予定されていた症例数に達せず、物品や解析での作業が予定より少なくなったためです。今後、さらに解析をすすめていくことと、再現性実験を行うことで、当初予定していた経費が必要となってくる見込みです。
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