これまで、転移性脊椎腫瘍に対する腫瘍塞栓術の癌特異的免疫学的上昇効果を検証した報告はない。当教室では転移性脊椎腫瘍に対する腫瘍塞栓術を併用した根治的切除術を多数実施してきたが、腫瘍塞栓術を併用することで術後全身治療を行っていないにもかかわらず、他の転移巣が縮小した症例が散見され、腫瘍塞栓による癌特異的な免疫上昇効果が得られた可能性があることを報告してきた。腫瘍塞栓術を併用した転移性脊椎腫瘍手術の癌免疫上昇効果を科学的に立証するために、患者採血検体および切除した腫瘍検体を用いて、各治療のポイント(初診時、塞栓術後、手術後1か月、3か月)で免疫モニタリングを行い、癌特異的免疫上昇効果を立証する。 IFNγ-ELISPOT assayを行った結果、塞栓術後1週間から1か月をピークにSpot数の増加がみられ、癌免疫上昇効果が確認できた。一方で効果は3か月にはピークアウトしている結果となった。今回の症例全体では、塞栓術前に比較しSpot数が増加した症例は実に77%にのぼった。これにより術前塞栓術によるAbscopal効果が示唆されたと考えられた。 本研究結果により、液体窒素処理骨移植による凍結免疫のほかに、脊椎腫瘍術前に行う脊椎腫瘍塞栓術による腫瘍壊死効果、壊死による癌免疫上昇効果が明らかとなった。具体的には、癌特異的免疫上昇効果が得られるタイミングは術後1週間から1か月をピークに徐々に漸減していくことが明らかとなった。術前腫瘍塞栓術による腫瘍壊死効果および液体窒素処理骨移植の癌免疫増強効果を確認できた一方で、その効果は限定的であることが明らかとなった。術前塞栓術による免疫上昇効果の経時的傾向をさらに検証することで、抗PD1抗体等の効果的なアジュバント投与の方法が確立される可能性がある。
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