骨粗鬆症薬であるテリパラチドの骨格筋脂肪変性に対する役割に着目した研究はほとんどない。この分子生物学的メカニズムを解明することで筋力低下・身体機能低下の予防の一助となり、将来的には、効果的なリハビリも可能となりADL低下防止に応用できる可能性があると考えられる。 8週齢マウスの卵巣を切除し、OVXマウスを作成し、対照群である偽手術群(Sham)にそれぞれPTHもしくはPBSを週3回腹腔内投与した。投与から20週で、運動能力(握力、トレッドミルテスト、血中乳酸値)を測定後、前脛骨筋・骨・子宮等を採取し組織学的・分子生物学的に解析した。In vitroでは、筋芽細胞のPTH受容体の発現をWBで確認後、PTH投与による増殖能、遊走能、分化能の変化を評価した。薬剤(MDI)刺激による脂肪分化モデルを使用し、PTHの脂肪化に対する抑制効果と、PTH効果のWnt/β-catenin経路と関与を組織学的、分子学的に評価した。 運動能力において、PTH投与は卵巣摘出によって誘発される運動能力低下と血中乳酸値上昇率を軽減した。前脛骨筋でがPTH受容体の発現を認め、卵巣摘出により誘発される前脛骨筋の酸化線維率と筋線維径の低下を改善し、筋細胞内脂肪滴の増加を抑制した。In vitroではPTHは筋芽細胞の増殖、遊走能、分化能を増強し、MDI刺激による脂肪滴分泌を減少させ、Wnt/β-catenin阻害剤を投与することでPTHの脂肪抑制効果が減弱された。 筋肉の機能障害の予防と筋細胞内脂質含有量の抑制におけるPTHの極めて重要な役割を示した。PTH受容体はマウス筋肉組織と筋芽細胞に発現し、OVXマウスへのPTH投与は筋力低下を改善し、運動による乳酸値上昇が抑制された。PTHは筋肉機能を調節する因子である可能性があり、PTHの投与が筋萎縮、機能障害の治療のための有望で新しい戦略の可能性がある。
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