研究課題
本研究の目的はWntシグナルに焦点を当て,骨軟部腫瘍における新たな治療法とWntシグナルが有効な治療標的となる骨軟部腫瘍およびコンパニオン診断に繋がるバイオマーカーの探索を行い,臨床現場における個別化医療の実現へ近づく事である.初年度はこれまでの研究に引き続き,Wntシグナル阻害剤による細胞増殖抑制効果と作用機序の検討を行った.Wntシグナルの重要な調節因子であるTNIKに着目し,TNIK阻害剤やsiTNIKを使用した遺伝子発現抑制により,各種骨軟部腫瘍の細胞に対する作用を検討した.骨肉腫(Hirozane T, JCI insight, 2021)および滑膜肉腫(Sekita T, Cancers, 2020)に対してWntシグナルの重要な調節因子であるTNIKの阻害剤がマウスXenograftモデルおよびヒト由来培養細胞株に対して有効性を示す事を作用機序を含め明らかとし,論文として公表した.特に申請者が中心となって研究を行ってきた骨肉腫に対するTNIK阻害剤の効能について,遺伝子発現をGlobalに抑制し,代謝パスウェイを活性化し,脂肪細胞への分化転換を誘導する事や,TNIKが脂肪分化のマスターレギュレータであるPPARGと相互作用し,PPARGのthreonine残基のリン酸化を調節している事などが明らかとなった.本研究により,骨肉腫や滑膜肉腫に対してWntシグナルの調節因子であるTNIKを標的とした治療の可能性が示された.またWntシグナルとPPARG発現のreciprocalな調節に,TNIKがその鍵の一つである事が部分的に明らかとなった.
2: おおむね順調に進展している
各種学会報告,論文採択され,概ね順調に進展している.
引き続き,他にWntシグナルが治療標的となりうる骨軟部腫瘍の探索およびTNIKを標的とした治療法の臨床応用に向けた研究を進めていく予定である.
新型コロナ感染症の流行により,学会参加が不可能で参加費・渡航費などが不要となり,次年度使用額が生じた.余剰額は検体の遺伝子発現解析などに使用する方向で検討している.
すべて 2021 2020 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) 備考 (2件)
JCI Insight
巻: 6 ページ: -
10.1172/jci.insight.137245
Br J Cancer
巻: 121 ページ: 228-236
10.1038/s41416-020-01162-3
Cancers
巻: 12 ページ: -
10.3390/cancers12051258
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2021/2/5/28-77983/
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2021/0205/index.html