整形外科領域において、骨折後の偽関節や骨矯正固定術後の偽関節のため複数回手術を要し、治療に難渋する症例が少なくない。申請者の所属教室ではWntシグナルの活性化因子であるR-spondin(Rspo)2の骨形成における重要性を見出し、Bone morphogenic protein (BMP)2と協調的に骨形成を促していることを確認している。この知見を活かし、(a)骨芽細胞の骨分化におけるBMP2とRspo2から誘導されるシグナルの相互的な分子メカニズムの詳細を明らかとする。所属教室で研究をおこなってきた自己組織化ペプチドを足場として用いる腰椎椎体間固定術での骨形成促進と共に、この自己組織化ペプチドにBMP2とRspo2を含有して実験することで、内因性骨芽細胞を速やかに足場へと誘導し、骨形成を促進することで (b)偽関節に対する新たな治療法を開発した。この自己組織化ペプチドは生体環境に近い中性のpHで十分な強度を発揮し、高い生体安全性を発揮し得る。また、本ペプチドはタンパク質含有性が優れ、BMP2やRspo2などの分泌因子を安定して保持するために有用であった。(a)の実験において骨分化に適したBMP2とRspo2の濃度を決定したが、自己組織化ペプチドを組み合わせることで、最低必要濃度を抑えることができたため、分泌因子BMP2の散布で従来見られた「炎症などの副作用の抑制」ができ、「局所での安定的・継続的な骨再生促進効果」も期待できた。
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