研究課題
変形性膝関節症(OA)は本邦で2530万人が罹患していると推定されており、ADL、QOLを著しく低下させるが、未だ病態を改善する内服薬開発は成功していない。OA患者では細胞外マトリックス(ECM)が変性し、関節液中ヒアルロン酸(HA)は低分子量化し、HAが病態形成に重要な役割を果たすと推測されている。近年、難聴の原因遺伝子として発見されたKIAA1199は既知のHA分解酵素より強力な活性があり、OAの滑膜線維芽細胞に高発現しているため、OAにおけるHA分解にKIAA1199の関与が推測されている。本研究の目的は、OAにおけるヒアルロン酸分解の関与が推測されているKIAA1199を抑制するDrugXを、OAの動物モデルに投与し、治療効果を検討し、臨床応用に向けた基盤データを得ることである。研究実績として、令和2年度は主にin vivo実験を中心に進めた。DMMマウスモデルの作成に成功し、OAのマウスモデルを安定的に作成することが可能となった。DMMモデルマウスにDrugXを投与し、手術側および、sham群の関節症性変化をMankin score などを用いて組織学的に定量、評価した。また、組織の軟骨、ヒアルロン酸、KIAA1199を免疫染色で評価した。経時的なCTによる関節症性変化の評価、滑膜組織のRT-PCR、Western blotting、ヒアルロン酸の濃度、分子量の測定、血清、関節液のヒアルロン酸の濃度、分子量の測定を課題としたが進捗は遅延している。
3: やや遅れている
DrugXの関節症抑制効果を調査するためのDMMマウスモデル作製(in vivo)は予定通り完了している。遅れている理由として、安定的なDMMマウスモデルの作成、組織の評価方法の確立、免疫染色の手技の安定に時間を要したが、これらの点については現時点で、ある程度達成されている。滑膜、血清からのヒアルロン酸関連データの抽出が急がれる。今般のCOVID19のパンデミックにより、研究計画は大きく影響を受けている。年度初めには本学ガイドラインにてCOVID19に関連する研究以外の研究活動の休止が指示され、動物実験施設への出入りも規制された。ピペットなど消耗品やPCR試薬の欠品や納入遅延も問題となった。現在は感染防止措置の上、実施可能と活動指針が緩和されたが通常どおりではない。また研究代表者は、診療従事者として、COVID対策に伴う臨床業務負担の増加に対応している。
今年度においては、早急な研究再開と進展について努力する。DrugX投与およびVehicleを投与したDMMマウスモデルから滑膜組織を採取し、RT-PCR、Western blotting にて関節症やヒアルロン酸代謝と関連する遺伝子、蛋白発現を解析し、また、血清、滑膜、関節液のヒアルロン酸濃度、分子量をELISA、Chromatographyで評価することにより、DrugX投与による関節症の改善効果との関連を評価する。研究環境として、技官および研究助手の勤務制限、テレワーク解除を期待する。
実験計画で予定していたRT-PCR、Western blotting、ヒアルロン酸の濃度、分子量測定が未施行であるため。使用計画:RT-PCR、Western blotting、ヒアルロン酸の濃度、分子量測定に必要な試薬、抗体、またマウスの購入、飼育のために研究費を使用する。今後、研究結果の発表に関連する学会および論文校正費用、また研究に関連する書籍の購入費用に研究費を使用する。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (3件)
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