本研究では、これまでにglycolysis阻害剤として2-deoxyglucose(2DG)とガラクトースを用いて軟骨細胞における炎症下の解糖系の細胞内代謝変動(嫌気性代謝の亢進)の制御が軟骨保護作用を有することを明らかにした。メタボローム解析を用いて、glycolysis阻害剤の細胞内代謝変動への影響を網羅的に検討し、TCA回路、アミノ酸分解、ペントース経路が変動し、2DGはいずれもこの亢進を抑制した。以上より解糖系以外にも複数の細胞内代謝の変動が発生していることを明らかにした。次にglycolysis阻害剤は炎症による軟骨細胞のエネルギー代謝のkey regulatorであるAMP activated protein kinase (AMPK)の活性化の低下を回復させるため、AMPKのアゴニストである5-Aminoimidazole-4-Carboxamide Riboside(AICAR)を用いて検討した。AICARはAMPK活性化の低下を抑制し、軟骨保護作用を認めた。さらに糖代謝以外の検討でグルタミン代謝の阻害剤であるepigallocatechin gallateと脂肪酸代謝の制御因子である Sterol regulatory element-binding proteins の阻害剤であるfatostatinもAMPK活性化を維持して軟骨保護作用を示した。次にin vivo研究として変形性関節症(OA)モデルである関節不安定化(DMM)モデルマウスを用いて、2DG、ガラクトース、AICARの各々を関節内注射し、その有用性を検討した。組織学的検討として2DG、ガラクトース、AICARのいずれもサフラニンO染色性低下を抑制しておりOARSI scoreはcontrol群より有意に低値でありin vivoにおいても軟骨保護作用を有することを明らかにした。
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