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2020 年度 実施状況報告書

細胞剛性に着目した転移抑制薬スクリーニング

研究課題

研究課題/領域番号 20K18062
研究機関三重大学

研究代表者

喜多 晃司  三重大学, 医学系研究科, リサーチアソシエイト (90828328)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード転移 / 剛性 / アクチン / 原子間力顕微鏡 / 骨肉腫
研究実績の概要

癌細胞の転移は多段階の過程を経て成立しているが、その全ての過程に細胞の形状変化、柔軟性が関与していると考えられる。柔軟性の高い細胞は転移を形成しやすく、柔軟性の低い細胞は転移を形成しにくいと仮定し、柔軟性を細胞の剛性(硬さ)と捉え、細胞表面を硬化させる薬物を探索し、抗転移抑制薬としての可能性を探るべく、本研究を行った。転移の発生時期は不明であるため、病巣が切除され、体内から腫瘍が消失するまでの期間の投与が必要である。抗がん剤との併用が可能な薬物が理想的であり、探索の対象を抗癌剤以外の一般薬とした。
まず、癌細胞のアクチン濃度を上昇させる薬物をスクリーニングし、厳選した薬物の細胞の剛性への変化を原子間力顕微鏡(AFM)にて測定した。マウス骨肉腫細胞LM8に対し、actin intensityを上昇させた薬剤A、B、C、D、E、Fのうち、実際にAFMにて細胞剛性を上昇させたのは、A、Fが顕著であり、その他は、わずかな上昇に止まった。
Fを中心に、細胞増殖能、浸潤能、wound healing、接着能評価をおこなった。A、Fはcontrolとほぼ変化を認めなかった。Cは細胞増殖抑制、wound healingの抑制を認めた。A、Fは、細胞の剛性の増加が主な作用であり、それ以外の、細胞増殖能、浸潤能、wound healing、接着能への作用を有しない薬剤であることがわかった。また、アクチン濃度の結果は、細胞剛性の結果とほぼ一致していた。アクチン濃度の評価は、細胞剛性の評価をする対象を絞るための、良いスクリーニング検査になり得ると考えられた。
次年度は、細胞剛性の増加作用を持つA、Fの、転移抑制効果を評価する予定である。マウス骨肉腫細胞LM8をマウス皮下に移植してマウスモデルを作成し、in vivoでの転移抑制効果の検討を行っていく予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

マウス骨肉腫細胞LM8のアクチン濃度を上昇させ、細胞剛性を上昇させる薬剤が比較的早期に見つかったため、その後の検討がsmoothであった。

今後の研究の推進方策

マウス骨肉腫細胞の増殖に影響を与えずに、細胞剛性を上昇させる薬剤として、A、Fを同定した。LM8マウス皮下移植モデルを作成し、A、Fを投与することで、肺転移抑制効果の検討を行う。
LM8マウス皮下移植モデルは、皮下に移植するだけで肺に転移をきたす、非常にユニークな動物モデルであり、実際の骨肉腫転移形態にもっとも近いモデルと考えられる。A、Fは、細胞増殖に変化を与えないため、増殖抑制による肺転移抑制効果は認めない。A、Fの転移抑制効果を認めた場合、以下の研究的意義が考えられる。1)細胞剛性を基準とした転移抑制剤の創薬が可能であること、2)細胞の増殖経路とは異なった機序で転移抑制が可能であること、3)抗がん剤ではない一般薬の中に細胞剛性を上昇させうる薬剤が多数存在している可能性、4)抗がん剤とは異なり、転移のみを抑制する治療が可能であること、など、非常に重要な意義を有している研究である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件)

  • [雑誌論文] Prognostic Significance of Thrombomodulin mRNA in High-Grade Soft Tissue Sarcomas after 10years.2020

    • 著者名/発表者名
      Asanuma K, Nakamura T, Asanuma Y, Okamoto T, Kakimoto T, Yada Y, Hagi T, Kita K, Nakamura K, Matsumine A, Sudo A.
    • 雑誌名

      Orthop Surg.

      巻: 12(6) ページ: 1726-1732

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Deep vein thrombosis of the upper extremity caused by central venous port in a patient with soft tissue sarcoma: A case report.2020

    • 著者名/発表者名
      Kita K, Nakamura T, Nakamura K, Hagi T, Asanuma K, Sudo A.
    • 雑誌名

      Mol Clin Oncol.

      巻: 13(6) ページ: 89

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Clinical outcome of latissimus dorsi reconstruction after wide resection of soft-tissue sarcoma.2020

    • 著者名/発表者名
      Kita K, Nakamura T, Tsujii M, Kato J, Hagi T, Asanuma K, Sudo A.
    • 雑誌名

      Eur J Orthop Surg Traumatol.

      巻: 30(8) ページ: 1441-1446.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Anti-tumour effect of tocilizumab for osteosarcoma cell lines.2020

    • 著者名/発表者名
      Hagi T, Nakamura T, Kita K, Iino T, Asanuma K, Sudo A.
    • 雑誌名

      Bone Joint Res.

      巻: 9(11) ページ: 821-826

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Soluble programmed death-ligand 1 rather than PD-L1 on tumor cells effectively predicts metastasis and prognosis in soft tissue sarcomas.2020

    • 著者名/発表者名
      Asanuma K, Nakamura T, Hayashi A, Okamoto T, Iino T, Asanuma Y, Hagi T, Kita K, Nakamura K, Sudo A.
    • 雑誌名

      Sci Rep.

      巻: 10(1) ページ: 9077

    • 査読あり

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公開日: 2021-12-27  

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