研究課題
癌細胞の転移には癌細胞形態の変化が必要であり、アクチン再構成でコントロールしている。柔軟性が高い細胞は転移を形成しやすく、低い細胞は転移を形成しにくいと予想され、細胞の柔軟性の低下は転移の抑制に繋がると考えられる。細胞の柔軟性を細胞の剛性と捉え、細胞の剛性を増幅させる薬物のスクリーニング、転移抑制効果の検討を行った。マウス骨肉腫細胞の低転移株であるDunn、その高肺転移株であるLM8を用いてファロイジン染色によるアクチン濃度、原子間力顕微鏡による剛性の比較を行った。LM8でアクチン濃度、剛性の低下を認め、論文で報告した(Kita.Curr.Issues Mol.Biol.2021)。次にChannel遮断薬を中心に、Na+遮断薬(Disopyramide(Dis)、Pilsicainide、Lidocaine(Lid))、K+遮断薬(Nifekalant)、Ca+遮断薬(Amlodipine(Aml)、Azelnidipine、Benidipine)、Gap junction遮断薬(Carbenoxolone(CBX))の検討を行った。Na+、K+遮断薬ではDis、Lid、Ca+遮断薬ではAml、及びCBXが、LM8におけるアクチン濃度、剛性の上昇が顕著であった(一部最終年度での結果を含む)。これらの中でAmlは細胞増殖を抑制したため除外した。最終年度では、LM8をマウス背部皮下に移植し、Dis、Lid、CBXの腹腔内投与による肺転移抑制の検討を行った。背部皮下の腫瘍はいずれも増殖抑制を示さなかった。Dis、Lidは肺転移を抑制したが有意差は認めなかった。CBXは有意に肺転移を抑制した。以上より、CBXは細胞増殖を抑制せず、細胞の剛性を上昇することで肺転移を抑制した。悪性腫瘍の転移発生時期は不明である。転移への介入時期は、初診から原発巣の完全切除までと予想される。その間に抗癌剤のような高リスクではなく、低リスクで長期投与が可能であり、抗がん剤投与中も投与できるような薬剤が理想であると考えられる。消化性潰瘍治療薬であるCBXは、まさに理想的な転移抑制剤であると考えられた。
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