研究課題/領域番号 |
20K18063
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
長井 寛斗 神戸大学, 医学部附属病院, 医員 (30847372)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 前十字靱帯 / 徒手検査 / Pivot-shift test / 回旋不安定性 / 検者 / 定量評価 / 生体医工学 / スポーツ医学 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、Pivot-shift test(膝前十字靱帯損傷における回旋不安定性を評価)において、検者が加える力の定量、および脛骨整復時の後方加速度を同時に計測する独自のシステムの開発を、研究協力者である福井大学大学院工学研究科長宗高樹准教授とともに進めた。システムは、9軸慣性センサー、圧力センサーとマイクロコントーラー、パーソナルコンピューターを組み合わせ作製した。ベルクロストラップおよびセンサー固定用のプラスチック製のバンドを用いて、9軸慣性センサーを被験者の大腿外側と下腿外側に1つずつ装着。これにより被験者膝関節の屈曲・伸展関節可動域を計測できるよう、ソフトウェアの開発を行うことで、膝関節屈曲・伸展角度(°)が精度良く計測可能となった。さらに、前十字靱帯不全膝でみとめられる、脛骨近位が前方亜脱臼から後方へ整復される動き、つまりPivot-shift現象を定量するため、大腿に装着した慣性センサーを基準とした下腿センサーの加速度(m/s2)を算出できるように、装着位置や向き、計測方法の検討を行った。慣性センサーシステムのサンプリング周波数は当初40Hz程度であったが、改良により60Hzでのサンプリングが可能となった。 その上で、検者が被験者に加える力を定量するため、検者の両手掌に約5cm×5cm大の圧力センサーをストラップで固定し、検査時に加えている力(N)の定量が出来るようにした。これらはマイクロコントーラーを介してパソコン上で慣性センサーのシステムから得られた膝屈曲角度や下腿の後方加速度と同期し同時に計測が可能である。さらにすぐに解析、データ確認がその場で可能となるよう、解析ソフトウェアの開発も並行して行った。 以上のようにシステムの改良を重ねることで、当初目標としていたシステムをほぼ完成することができている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、当初電磁気センサーシステムを用いて、Pivot-shift test時の脛骨後方加速度を測定し、徒手検査定量化システムと同期する予定で検討していたが、開発を進める中で、9軸慣性センサーのみを用いてPivot-shift test時の脛骨後方加速度を計測できうるということが明らかとなったため、当初予定していたシステムと変更し、電磁気センサーシステムを用いずに、9軸慣性センサーおよび圧センサーのみを使用したシステムを構築する方針に変更した。これにより当初は今年度中に実際の前十字靱帯損傷患者で同システムを用いて計測を開始する予定であったが、上記のような計画の一部変更が出てきたため、システム構築に当初の計画よりも時間を要した。また、実際の臨床現場で計測を開始するためには、システム自体の細かな改良や変更が複数回必要であったため、それらにも予定よりも時間を要した。またPivot-shift test時の脛骨後方加速度の計測、算出方法の改善にも時間を要した。以上により当初の予定よりやや遅れている状況であるが、計測可能なシステムがほぼ構築できたため、令和3年度中に計測を開始する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り令和2年度で、Pivot-shift test時の検者の加える力の定量およびPivot-shift test時の脛骨後方加速度の定量化が可能なシステムが構築できたため、令和3年度中に同システムを用いて、前十字靱帯損傷膝での計測を開始する予定である。これまでのシステム構築の段階においては、ボランティアの正常膝を用いて行っていたため、実際に前十字靱帯損傷膝で計測した場合に、Pivot-shift test時の脛骨後方加速度がどのように算出されるかは、今後計測を進めていく中で振り返りながら評価していく必要がある。より安定した計測を可能とするためには、場合によってはシステムの一部改良が適宜必要になる可能性もありうると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に物品費、旅費が当初の計画より使用額が少なかった。コロナ禍のため、当初の予定と比べ、研究遂行に必要なミーティングや技術指導のための出張、および学会参加のための出張が少なくなったため、次年度使用額が生じた。次年度にも必要物品など購入予定であり、またミーティングの出張や学会参加のための出張を予定しており、使用予定である。
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