研究課題/領域番号 |
20K18065
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山崎 尚也 広島大学, 病院(医), 助教 (60839207)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 関節エコー / 血友病性関節症 / スコアリング |
研究実績の概要 |
前年度報告時に関節裂隙にある軟部組織移動の有無やパワードプラシグナル(PDS)の強度などにより出血予防療法実施中であっても足関節内出血の予測可能なスコアリングシステムを構築中と報告していたが、さらに症例を蓄積して解析した結果を「第84回日本血液学会学術集会」にて報告した(OS1-7A2)。関節評価法として、Arnold分類、Pettersson分類、HEAD-US法、本研究にて構築した新規スコアリングシステムとし、各データ抽出項目(質問紙による自覚症状(オノマトペの数)、足関節内出血の有無、凝固因子活性最低値のデータ(定期補充療法実施中の場合はトラフ値、未実施の場合はベース値))において、出血群と非出血群の2群に分けて統計的有意性検定を実施し、p<0.01を有意差ありとし判断した。なお、本研究にて新規構築した足関節出血予測スコアリングシステムにて評価する項目は、「距骨ドームの構造」「距腿関節裂隙にある軟部組織の移動」「距腿関節周囲のPDS」「移動する組織内のPDS」とした。対象者は24人、対象関節総数は48関節であり、出血群は9人・11関節、非出血群は22人・37関節であった、出血群と非出血群を比較した際、年齢(p=0.108)、凝固因子活性最低値(p=0.806)、オノマトペの数(p=0.047)、Arnold分類(p=0.032)、Pettersson分類(p=0.033)、HEAD-US法(p=0.041)と有意差を認めず、新規スコアリングシステムのみ有意差を認めた(p=0.007)。この結果より、これまで血友病性関節症を有した血友病患者における関節エコーによる関節評価は困難とされてきたが、足関節における出血予測という観点においては有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例数は十分となり、順調に進展していると言える。しかし、データ量が膨大であり、その整理と解析に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
本スコアリングにて評価する項目は、エコープローブを当てる位置や角度が多少変わってもスコアリングに大きく影響を与えないことが利点として挙げられるものの、エコー機器によってPDSの検出力に差があるため、エコー機別に本スコアリングの有用性を検証する必要がある。 2021年度から2023年度にかけての関節超音波画像検査実施人数は59症例となり、中間報告よりも多い症例数にても本スコアリングシステムが有用であるかを再検討する必要がある。さらに、経時的変化を追えている症例が24例あるため、出血予測のみにとどまらず、スコアによって関節症の進展度にどのように影響するかもあわせて評価していきたい。そして、上記は足関節におけるスコアリングシステムではあるが、本研究においては肘関節や膝関節のデータ収集もしているため、上記スコアリングシステムの評価項目を参考に、それらの関節においても同様に出血予測としてのスコアリングシステムを構築し、有用性を検討する予定である。 一方、関節内出血を認めた際にはできる限り超音波画像検査を実施するように参加者に来院を促してはいるが、SARS-Cov2蔓延により参加者のもとに訪問しにくい状況や、出血時の来院は困難な状態でもあり、出血時の状態評価は5症例のみの評価に留まっている。その限られた症例においてみられる所見としては、非出血時と比較して関節近傍のPDS増加および血液と考えられる液体貯留などを認めるため、一度出血予測スコアリングのための関節エコー評価を実施していれば、出血による関節痛であるのか、関節変形に伴う関節痛であるかの判別は可能であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により県を跨ぐ移動が制限された影響にて当初考えていた研究発表で必要となる交通費等が生じなかったことで次年度使用額(216,200円)が生じた。令和5年度予算と合わせた使用計画については、研究発表に要する交通費として都心部であれば40,000円前後(新幹線往復代)、海外(北アメリカ、欧州など)であれば200,000円前後(往復航空券代)の費用に充てる予定としている。
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