研究実績の概要 |
腰部脊柱管狭窄症(LSCS)は中高年の歩行能力の低下をもたらす代表的疾患の一つで、本邦での患者数は約600万人とされ、高齢化の進行とともに今後さらに増加していくことが予想される。LSCSでは脊柱管の狭窄により神経が圧迫され腰下肢痛を引き起こすが、狭窄を引き起こす要因として黄色靭帯(LF)の肥厚が大部分を占める。LSCSでは鎮痛効果や血流改善を目的とした薬物治療が行われるが、LSCSの病態の進展を抑制する治療法はなく、LF肥厚の機序を明らかにすることで新たな薬物治療の開発に繋がることが期待される。近年、脊椎変性に関しアミロイド沈着の関与が報告されている。私たちは、その機序に着目し、LSCSにおけるLF肥厚にアミロイド沈着が関与することを推察し、高齢者におけるLF肥厚においてtransthyretin(TTR) amyloid が一部関与している可能性があることを発見した。(Yanagisawa, A. Modern Pathology, 2015, 28.2: 201.) これを発展させ、熊本大学病院脳神経内科アミロイドーシス診療センターと共同して、Mass spectrometry を用いたプロテオミクス解析にてアミロイド前駆体タンパクがどのようにして、LFの変性機序に関与しているかを網羅的に解明する。そして、LSCSに特徴的および特異的なアミロイドがあるかどうかを明らかにし、アミロイド沈着をターゲットとした新規治療薬を開発することを本研究の目的とした。
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