研究課題/領域番号 |
20K18069
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
房川 祐頼 札幌医科大学, 医学部, 助教 (30868112)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 筋疲労 / ミトコンドリア / DRP1 / 温度介入 |
研究実績の概要 |
運動後筋疲労に対してスポーツ現場で様々な対症療法が行われている。運動直後にはアイシング、冷却が行われているがエネルギー代謝の観点からはむしろ温熱 の方が有効であるという報告も多く温度介入はいまだ根拠が乏しい。筋疲労の発生には複数の分子機序が関与するが、興奮収縮連関の過程において必要なエネル ギー (特にアデノシン三リン酸:ATP)の需要を賄えないことが機序の主要因として注目されている。ATPの主要な供給源であるミトコンドリアの機能が大きな役割 を担っているが、ミトコンドリアは絶えず融合 (fusion)、分裂 (fission)、オートファジーにより品質管理されている。運動によりfissionを制御するDRP1の Ser616リン酸化が活性化することが知られている。Wistar系雄ラットを用いトレッドミル走行運動後の温熱、冷却介入によって筋ミトコンドリアのDRP1の変化と底屈筋持久力について調査した。30分トレッドミル走行をさせた後30分の温度介入(室温、温熱42度水槽、冷却16度水槽に下腿を暴露)を単回介入実験では、採取した筋サンプルにおいて、DRP1-Ser616のリン酸化レベルは、運動直後に比べ温度介入直後では、冷却群で増加し、温熱群、室温群でむしろ低下した。運動後温度介入を2日に1回、2週間施行した複数介入実験では、2週間後の下腿底屈筋の疲労耐性は冷却群は温熱群、室温群に比較し有意に増加していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単回の介入実験で得られた生化学的変化から、複数回介入実験を行うことで筋生理学的な表現型を捕らえるところまで至ったため。
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今後の研究の推進方策 |
生化学的に認めたシグナル伝達系と複数介入実験において生じた表現型との関連を調査するためミトコンドリアの電子顕微鏡像の調査を行う。骨格筋からの単離ミトコンドリアを用いた最大酸素消費率を評価するプロトコルを確立したうえで、運動後温度介入によってミトコンドリア機能自体がどう変化したかについての実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
追加実験を予定するため試薬購入費として次年度使用分としたため。次年度7月までに使用完了予定。
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