我々は、transient receptor potential ankyrin 1(TRPA1)の欠損が、マウスの皮膚創傷治癒過程に影響を与えるかどうかを検討した。筋線維芽細胞やマクロファージによる肉芽組織の形成、再上皮化、関連する遺伝子発現を評価した。創傷モデルの確立には、TRPA1-null(KO)および野生型(WT)のC57BL/6マウスを使用した。全身麻酔下でマウス背部皮膚に2個の円形全層切除創(直径5.0 mm)を作製した。一定時間経過後、肉眼観察、組織学、免疫組織化学、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて治癒の過程を評価した。TRPA1の欠損は、マウスの皮膚創傷治癒過程における肉芽組織の形成と再上皮化を遅らせることがわかった。詳細な解析の結果、TRPA1の欠損は、筋線維芽細胞の出現、マクロファージの浸潤、αSMA、F4/80、Col-1α2のmRNA発現を抑制していることが分かった。これらの結果から、TRPA1がマウスの皮膚創傷治癒に必要であることが示された。TRPA1の欠損は、マクロファージの浸潤とそれに続く線維組織の形成を遅らせ、線維芽細胞の線維化挙動をさらに損なう可能性がある。
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