研究課題
肥満は変形性膝関節症(KOA)の発症、進行の危険因子であることが示されているが、その機序は十分に理解されていない。近年我々は肥満KOA患者の滑膜組織でマスト細胞(MC)マーカーの発現が増加することを報告した。 MC産生酵素であるtryptaseは炎症に関与することが知れられていることから、tryptaseが肥満KOA患者の滑膜で増加し、滑膜の炎症に関与するとの仮説を立てた。本年度は、肥満KOA患者の滑膜組織におけるtryptaseの発現および滑膜細細胞に対するβ-tryptaseの作用を検討した。KOAと診断された患者をBMI(body mass index)に基づいて正常、過体重および肥満の3群に割り当てた。各群の滑膜におけるβ-tryptase遺伝子(TPSB2)の発現をReal time PCRを用いて比較検討した。また、単離したMC+分画)およびMC-分画のTPSB2およびIL1βの発現を検討した。また、培養CD14陽性(マクロファージ分画)およびCD14陰性(線維芽細胞分画)をrh-β-tryptase存在下で刺激後、IL-1βの発現を検討した。TPSB2発現は、正常群にくらべ過体重および肥満群で有意に高かった。 MC+分画におけるTPSB2、CD117およびCD203cはMC-分画と比較して有意に高かった。一方、IL-1bの発現MC-分画で有意に高かった。 rh-β-tryptase刺激により滑膜線維芽細胞とマクロファージ分画のIL1B発現が上昇した。肥満に伴い増加したMCはβ-tryptase産生、IL-1β発現上昇を介して滑膜組織の炎症に関与する可能性が示唆された。本メカニズムは肥満によるKOA発症・進行メカニズムの一端を担っているかもしれない。
2: おおむね順調に進展している
肥満細胞による炎症惹起機構の一端を明らかにしており、おおむね順調に進展していると考えられる。
肥満で増加する肥満細胞サブセット、肥満細胞動員機構を明らかにする予定である。
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Diabetes Metab Syndr Obes
巻: 13 ページ: 1491-1497
10.2147/DMSO.S253147