研究課題
昨年度までに肥満KOA患者の滑膜組織で塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)が増加すること、bFGFとマスト細胞(MC)マーカーの発現が相関することを報告した。これまでにbFGFとOA病態との関連性が報告されているが、bFGFの発現上昇機序については関連性は明らかになっていなかった。本年度は、肥満細胞が直接的あるいは間接的にbFGFの発現に関与しているとの仮説のもと、KOA患者の滑膜組織におけるbFGFの発現上昇機構を検討した。 KOAと診断された患者をBMIに基づいて正常、過体重および肥満の3群に割り当てた。各群の滑膜におけるbFGFの発現をReal time PCRを用いて比較検討した。また、酵素処理後、磁気ビーズを用いて単離したMC+分画およびMC-分画におけるbFGFおよびbFGFの制御因子の一つであるIL13の発現を検討した。また、培養CD14陽性(マクロファージ分画)およびCD14陰性(線維芽細胞分画)をrh-IL13存在下で刺激後、bFGFの発現を検討した。bFGFの発現は、正常群に比べ肥満群で有意に高かった。MC+とMC-分画間でbFGFの発現には有意差を認めなかった。MC+分画においてIL13の発現が有意に高かった。本研究結果から肥満に伴い増加したMCが産生するIL13によってbFGFの発現が制御されている可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
これまでに肥満細胞の産生因子およびその作用を明らかにしており、概ね順調に進展している。
肥満細胞にはトリプターゼタイプとトリプターゼ/キマーゼタイプが存在することが報告されている。次年度は肥満で増加する肥満細胞タイプを検討する予定である。
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Diabetes Metab Syndr Obes
巻: 14 ページ: 3291-3297
10.2147/DMSO.S319537